ストレスを理由に飼い猫に火を付けてやけどを負わせたとして、動物愛護法違反の疑いで書類送検されたものの不起訴となった男性(31)について、大阪地検は令和3年10月に一転、同罪で略式起訴した。
検察審査会が「起訴相当」と議決したことで検察側が再捜査し、判断が覆った。検審の議決書は、猫に火を付けた男性の行為を「悪質で常軌を逸した残忍なもの」と厳しい表現で非難。専門家も「犯罪と認識すべきだ」と指摘しており、動物虐待に対する世間の風当たりは強くなっている。

「精神的に参っていた」

オスの三毛猫。名前はトラという。部屋で無邪気に遊ぶ姿が愛らしいが、かつて味わった虐待は過酷だった。

令和3年1月8日、飼い主だった男性(31)=大阪府箕面市=に消毒用のエタノールを浴びせられ、火のついた割りばしを体に押し付けられた。

耳は焼けただれ、腹部の毛は焼け落ち、全身にやけどが広がった。翌9日、箕面市内の動物病院でやけどの治療を受けたが、トラを連れてきた男性が「ストレスがあり、精神的に参っていた」と獣医に虐待を打ち明けた。
病院側からの通報を受けた大阪府警は、事情聴取をした後の同26日、動物愛護法違反容疑で男性を書類送検。地検は男性がトラを連れて動物病院を受診したことなどを考慮し、不起訴(起訴猶予)とした。

しかし、この不起訴処分をめぐっては、トラを譲った保護猫カフェを営む木村知可子さんや、動物愛護団体などが反発し、検察審査会に不服を申し立てた。

検審は「起訴相当」と議決し、地検は再捜査の末に男性を略式起訴。令和3年10月に簡裁が罰金10万円の略式命令を出した。

トラはその後、順調に回復し、新たな飼い主の元で生活しているが、耳の傷ややけどの痕は残ったまま。木村さんは「起訴はされたが制裁が軽すぎる」とし「動物を虐待する人を増長させてしまう」と憤る。

https://www.sankei.com/article/20220101-KJ5DY5C6UNMOHCKGIUNC6BSERA/