世界にあまたの航空会社があるなか、JAL(日本航空)が強みにしているもの、それが国際線エコノミークラスです。
 
 JALの国際線エコノミークラスは、英国の航空業界の格付け会社・スカイトラックス社から「世界一」の評価を2期連続で受賞。
とくに機内食・サービスなどを含まない、シートの評価に至っては、2015(平成27)年から通算5度の「世界一」評価が与えられています。
この評価は、航空利用者からの投票をもとにしたものとのこと。

 ここまで旅客を引きつけるJALのエコノミークラスとは、どのようなものなのでしょうか。

 JALの現行の主力エコノミークラスは「スカイワイダー」と呼ばれるもの。
その名の通り、1席あたりの広さが一般的な国際線エコノミークラスより広いというのがウリです。
たとえば、横9席(3-3-3列)配列が主流を占めるボーイング787の場合、JALのもの(JAL スカイスイート 787仕様機)では横8席(2-4-2列)を実現させ、1席あたり横幅+5cmのスペースを確保しました。

 これは、できる限り席を多く設置して1便あたりの収益を高めるエコノミークラスの基本的な考え方とは、ある意味正反対です。

 同社でこの仕様の開発に携わったJALの商品・サービス企画部の西垣淳太さんによると、足元のスペースについても「従来とくらべ最大約10cm程度広げた」とのことです。

 前後の足元スペース最大約10cmの拡張幅については「座っているときにお客様が(気兼ねなく)脚を組めたりですとか、(ほかの旅客が)通路へ出る際にいちいち立たなくても済むようにという快適性と、(席を減らすことによる)収益性のバランス、臨界点を見定めて決めていきました」と話します。

 ただ、“質重視のエコノミークラス”というコンセプトが決まったあとも、西垣さんは「完成までにメンバー一人ひとりが苦労しました」と話します。
それは、標準的なエコノミークラスでは採用し得ないようなレイアウトゆえでした。

 西垣さんによるとJALの「スカイワイダー」は「座席メーカーにとっても初めての仕様もあるゆえ、たとえば安全性のテストも前例がなく、いろいろなテストをやる必要がありました」といいます。

「結果的に、想定より開発期間が必要になるなか、それをどれくらい圧縮できるのかなどを毎日のように考えました。最終的にはトータルの開発期間は変わっていませんが、テスト時間を多めにし、生産期間のピッチを上げるなど、時間の構成を工夫しました」とも。
「そのおかげで安心してお客様に乗っていただける座席ができたので、努力した甲斐があったなと思いました」と話します。

 なお、「スカイワイダー」は広さ以外に、なんとも“日本らしい”工夫もあります。
西垣さんによると「スカイワイダー」は、実は普通の座席よりも最初から1インチ倒しているとのこと。
「日本の気質的に後ろの人を気にしてしまって倒しづらい」と乗客からの意見があり、ずっと座席を立たせ搭乗するスタイルでも、快適性を上げるためだそうです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7dcd7ae94f9586e1a812968df4dc4aa197a43c6f