どこ吹くコロナ、新富裕層台頭 金融機関が熱視線

数十億円以上の金融資産を持つ超富裕層が世界で拡大している。世界的なカネ余りによる新規株式公開(IPO)の活況などが背景にあり、新型コロナウイルス禍もどこ吹く風で潤う。若い世代も増え、マネーの流れの景色を変えつつある。各国の金融機関や税務当局は新たなお金持ちたちへのアプローチに躍起となっている。

コロナ危機で世界経済が戦後最悪のマイナス成長に陥った2020年。仏キャップジェミニの調べによると、金融資産を100万ドル(約1億1000万円)以上保有する富裕層は前年から6%増えて2080万人に拡大した。最上位の「ウルトラ・ハイネット・ワース」と呼ばれる金融資産3000万ドル以上の層も10%増の20万人に達した。

国別で富裕層が最も多いのは米国で、日本が続く。日本は先進国の間でも人口規模が大きく、一般に金融資産を比較的多くもつ高齢者の割合が高いことも背景にあるとみられる。

新興富裕層はIPOや会社の売却を機に資産を増やす30〜50代が多い。あるスタートアップの経営者はIPOで資産を一気に数百億円に増やした。「多くの金融機関からコンタクトがあった。うち数社と付き合っている」。資産の大半は自社株で、一部を現金化して不動産を購入したり新興企業に投資したりしている。「普通の会社員だった」という起業前と日常は様変わりした。

メガバンクや証券会社、外資系金融機関が入り乱れ、あの手この手で囲い込みに動く。40代の富裕層の一人は「別荘探しから子どもの海外留学の手配まで何でも対応してくれる」と満足げだ。

■超富裕層 富裕層の中でもとくに資産規模が大きい層を「超富裕層」、さらに規模が大きい最上位層を「ウルトラ・ハイネット・ワース」と呼ぶ。
調査によって定義や基準は異なる。資産規模100万ドル以上を富裕層、500万ドル以上を超富裕層、3000万ドル以上をウルトラ・ハイネット・ワースと分ける場合が多い。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB165PB0W1A211C2000000/