人材流出で技術が中国、韓国に漏洩…「日本製半導体」が凋落した理由とは

■情報と人材の流出

いまや「センサー半導体を持つソニー、半導体材料・装置メーカーの一部を除いて、戦後の焼け野原に近い」(メーカー技術者)と自嘲気味に語られるほどの惨状となった日本の半導体。
その凋落の原因を、富士通元執行役常務の藤井滋氏(現SSC代表取締役)は語る。

「日本の半導体は70年代、80年代までは技術的にも世界のトップだったし、世界標準も作ってきた。2000年代からはその後も何とかなる、と言い続けてもう20年になります。
とくに日本は半導体を使う顧客対応の部分がダメで、現在はデバイスと製造、それにEDA(設計自動支援ツール)やIP(回路開発データ)も上手くいかない。結局、日本はグローバル化した時に、本社の決断が遅く、組織人事も流動化しなかったことが大きいと思います」

90年代中盤から顕著になってきたのは、半導体技術の情報と人材の流出である。当時日本企業は、新興企業の韓国のサムスン電子やSKハイニックス、台湾TSMCから猛追されていた。

■好待遇の韓国、中国にヘッドハントされ…

その陰には、日本人技術者たちの半導体技術情報の提供があった。当時、構造不況に陥ったメーカーでは、雇用形態や人事制度も変化した。
そこで日本の半導体業界でもリストラや賃金カットが行われると、日本人技術者のヘッドハントによる海外流出が相次いだのだ。

「韓国の一流企業クラスだと、(日本人技術者の年俸は)3千万円から4千万円になる。多くは3年契約で、所得税は5年間無税。
中には1年目は4千万だけど、2年目は3千万円、3年目は無報酬というケースもあり、中国はお金と女で報酬は日本の数倍だけど、本当にお金を持って帰れるかどうかわからないリスクもあった。
それでも日本人技術者は海外へ行ったわけです」(藤井氏)

一方、当時の日本人技術者の平均年収は、特別な手当もなく、製造業としての全国一律型の賃金制度の上に、40代で450万円程度。これでは勝負にならない。

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12280-1403984/