1960年代前後の高度経済成長期、「団地」は多くの人々にとって憧れの住まいで、ステンレス製の流し台や浴室、水洗トイレがある暮らしは時代の最先端でした。
展示されている住戸の間取りは2DKですが、今ではすっかり一般的になった「2DK」という言葉は公団が使い始めた名称なのだそうです。
松戸市立博物館に展示されているのは、2部屋の和室とダイニングキッチンという間取りで、食事をする場所と寝る場所を別にする「食寝分離」という考え方が明確に実現されています。

この2DKの空間は、常盤平団地のある建物を正確に復元したものです。電化製品や家具、衣類、食器などの台所用品、当時の製品のパッケージに至るまで当時の世界観で統一されています。
20代の夫婦と1歳の子どもがいる家族が住んでいる想定の演出ですが、その人物設定はかなり詳細です。
「1960年4月に結婚し、そのまま常盤平団地に入居した夫の兼二郎(29歳)、妻の陽子(27歳)の2人には、翌年4月に長女の真理子が誕生。
兼二郎は地方都市の商家の次男として生まれ、地元の高校から東京にある大学へ進学、現在は品川にある家電メーカーに勤務していて、趣味は映画と音楽鑑賞、特にフランス映画とモダンジャズを好んでいる…」といった具合です。
子どもができるまで共働きだった比較的高収入な家族で、家事を合理化しようと、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品を積極的に利用。
和室にソファを置くなど、当時の最先端だった欧米の生活に思いを馳せながら暮らしているイメージなのだそうです。

https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-4846/