「東京チカラめし」が香港で大当たり! 想定の2倍で売れている理由

 かつてブームを起こした牛丼チェーン「東京チカラめし」が、ちょっと面白いことになっている。「店舗をたくさん閉鎖したよね。ひょっとして、また増やしているの?」「そーいえば、ECサイトで商品を売っているって聞いたことがあるなあ。爆発的に売れているの?」などと思われたかもしれないが、どちらも違う。

 2021年6月、香港に進出したところ、大当たり。連日のように行列ができていて、9月に2号店、12月に3号店をオープンしたところ、こちらも人気を集めているのだ。

 「『東京チカラめし』で食べたことがないなあ」「食べたことはあるけれど、ずいぶん前のことなので、どんな味だったのか忘れちゃった」という人もいると思うので、簡単に紹介しよう。運営しているのは、居酒屋チェーン「金の蔵」などを手掛ける三光マーケティングフーズ(東京都新宿区)。11年、東京都豊島区に1号店をオープンし、最盛期には132店舗まで拡大した。その最大の要因は「ぐつぐつ」ではなく、「ジュージュー」がウケたからだ。

 大手チェーンの牛丼といえば、牛肉を「煮ている」わけだが、東京チカラめしは「焼いた」。当時、焼き牛丼が目新しかったこともあって、急成長したのだ。しかし、である。華々しい出店攻勢の裏で、現場はちょっとした混乱に陥っていた。

 人手不足でオペレーションがうまく回らず、サービスが低下。また、牛肉や米の高騰もあって、店舗数は急激に減ってしまったのだ。現在、国内で展開しているのは、新宿西口1号店、新鎌ヶ谷店、大阪日本橋店の3店舗のみ。

 ピーク時から130店舗ほど減らしているわけだが、なぜ香港で出店することになったのだろうか。海外事業を担当している津田浩司(執行役員)さんに聞いたところ「以前から東南アジアでの展開を考えていて、今後のことを踏まえて香港でオープンすることにしました」という。
研修は3カ月

 香港で飲食店を運営する会社とライセンス契約を結んで、1号店をオープンすることに。世界中で新型コロナの感染が広がっているなかで、現場でどのような研修を行ったのだろうか。調理などを担当する華康(か・こう)さんに聞いたところ、「現場に一度も足を運ばなかった」という。いや、本来であれば、現地であれこれ指導しなければいけないわけだが、空港到着後の待機期間(21日間)のことを考えて、日本から指示することにした。

 通常であれば、現地で1〜2週間ほどの研修をして、オープン後も1週間ほどフォローする。しかし、現場に足を踏み入れることができなかったので、オンラインで行うことに。このメニューはどういった食材を使っているのか、どういった調理をしなければいけないのか、さまざまな資料を送付した。また、日本国内で調理法などを撮影して、その動画を送ることに。現地スタッフはそれを見て、「こうかな」「いや、違うな。こうだな」といったことを確かめながら、手を動かしていった。

 もちろん、それだけで十分とはいえない。調理しているところをオンラインで見て、気になったことはその場でどんどん指摘していった。手順はあっているのか、水は適量なのか、温度設定はあっているのか。何度も見て、何度も指摘して、何度も調理してもらって。こうしたことは画面を通じて確認することができるが、味はどうだろうか。

 レシピを詳しく伝えても、肝心の味がイマイチではいけない。アンケートを用意し、各項目に答える形で、味をチェックしてもらった。味の確認も何度も繰り返すことで、ようやくお客に提供するところまでこぎつけた。先ほど「オープン前に1〜2週間ほど研修を行う」と紹介したが、1号店をオープンするにあたって3カ月ほど時間を要した。

 チェック項目は料理だけではなく、スタッフの動きであったり、店内の様子であったり、限られた時間のなかでチェックしていき、オープン初日を迎えることに。現地メディアが事前に報じたこともあって、初日は行列ができた。次の日も、その次の日も行列ができていた。

 日本の場合、ピークの時間帯は昼と夜だけ。1日に2つの山があるわけだが、香港では行列がなかなか途切れない。ピークの山がずーっと続いている状況である。「注目が集まるのは1カ月ほどかなと思っていましたが、6カ月以上たったいまも、行列ができていますね」(津田さん)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ee7052e7ca5c6c0abacea39214a408c3e2933933