ケイ素吸収に深く関わるイネのタンパク質の分子構造解明 岡山大・菅准教授ら、新品種開発につながる成果

岡山大異分野基礎科学研究所の菅倫寛准教授(構造生物学)らのグループは、
栄養分となるケイ素の吸収に深く関わるイネのタンパク質の分子構造を明らかにした。
少量の肥料から栄養を効率的に取り込む新品種の開発などにつながる成果という。

 タンパク質は、イネの根に集中する「Lsi1」。
土壌から水に溶けたケイ素を、優先的に取り込むことに関与していることは分かっていたが、
どのように吸収しているかは不明だった。

 グループは、培地に適した蛾(が)の卵巣由来の細胞を用いてLsi1を増殖。
タンパク質が溶けにくい沈殿剤に浸すことで、結晶化させることに成功。
エックス線を活用した特殊な手法で立体構造を分析したところ、四つのLsi1が一つの小さな集合体を形成していることが分かった。

 Lsi1には、水に溶けたケイ素の分子構造の形に似た穴が一つ開いており、他の物質を通しにくい構造になっていた。
穴の入り口周辺はプラスの電荷を帯びており、同じ電荷の鉄や銅をはじく性質も持っていたという。

 一方、Lsi1はケイ素だけでなく、毒性の強いヒ素が含まれる亜ヒ酸の吸収にも関与。
亜ヒ酸を含む土壌が多い海外では、コメに蓄積されることで深刻な健康被害を引き起こすケースがあるという。
菅准教授は「Lsi1の穴の形状や性質を変えるなどして亜ヒ酸は取り込まない、より優れた品種を開発し、
世界の食糧事情の改善に貢献したい」と話している。

 東京大先端科学技術研究センターとの共同研究。10月下旬、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに掲載された。

https://news.yahoo.co.jp/articles/79218e6b691143c43f3838cac2e2ed26ce8ff21f