【ドバイ=岐部秀光】イランのライシ政権が中国、ロシアに一段と接近している。ライシ大統領が今月の訪ロを予定し、アブドラヒアン外相が週内に中国を訪問する。安全保障や経済面の協力策を協議する見通しだ。

イラン核合意の再建交渉が難航する一方で、米ロや米中間の緊張が高まるなか「反米」の連携を演出して揺さぶりを強めるねらいだ。

イランメディアによるとライシ師はロシアへの訪問でプーチン大統領と会談し、期間20年、100億ドル(1兆1500億円)の安全保障協力合意に署名する方針だ。合意にはロシア製戦闘機の購入が盛り込まれる見通しで、老朽化した軍備の更新を通じて米国をけん制する。

アブドラヒアン氏は今回の訪中で、2021年3月に中国との間で署名した包括的戦略合意の具体化を協議する。

米国によるイランの金融や石油部門を標的とした制裁の効果が広がるなか、米制裁への抵触を恐れずにイランとの経済取引を続ける中国は、イランにとって重要なパートナーとなっている。

イランの核開発を制限する見返りに経済制裁を解除するイラン核合意はトランプ前米政権が一方的に離脱した。合意再建に向け、バイデン政権は復帰の意向を示すがウィーンで再開した協議は難航している。

イランは米制裁の解除だけでなく、その検証や米の再離脱を防ぐ仕組みを要求している。これに対し、米国はイランによる原子力活動の拡大を批判、欧州連合(EU)もこれに同調している。

中国とロシアが主導する地域協力組織の上海協力機構(SCO)は21年9月、タジキスタンで開いた首脳会議でイランの加盟手続きを始めることで合意した。米国と対立する3カ国は経済や安全保障で連携を強めている。3カ国は連携を強めて米国の負担を高める計算があるとみられる。

21年8月に発足したライシ政権は、ロウハニ前政権の進めた国際協調路線を修正し、米国との対立や、市場開放に背を向ける「抵抗経済」への傾斜を鮮明にしている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB102VF0Q2A110C2000000/