■「人新世」がキーワード
いま世界が直面する深刻な気候変動や生物多様性の損失、海洋プラスチック汚染などは、人類の経済活動が源であることは論をまたない。
人新世とは、経済が地球を破壊しかねない時代と言える。
新型コロナをはじめ未知の感染症も人類の活動領域の拡大が背景にある。地球にとって人類の存在はそれほど大きくなったわけだ。
この人新世をキーワードにした本が国内で予想外のベストセラーになった。若手の経済思想研究者である斎藤幸平氏の「人新世の『資本論』」(集英社新書)。
資本主義批判で知られるマルクスの思想に新たな光を当て、成長を至上の価値とする経済からの脱却を訴えている。初版は一昨年だが、コロナ禍が続く中で新たな読者を獲得している。
国連の持続可能な開発目標(SDGs)ですら、経済成長で危機を解決しようとする点で矛盾あり−という斎藤氏の踏み込んだ主張に共感が広がる理由は何か。
今、何かを変えないと、取り返しがつかぬことになりかねない。そんな意識の広がりを感じさせる。
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