音楽分析会社の「MRCData」の最新データによると、近年のアメリカの音楽市場の成長は「すべて古い曲によるもの」だという。そして「新しい音楽の市場は縮小傾向にある」。

すべての音楽ストリーミングにおいて、最も人気のある200曲のうち、新曲(過去18ヶ月以内にリリースされた曲)が占める割合は、なんと5%未満。少なくとも3年前は「10%はあった」と、同氏は述べている。

一体なぜ、新曲は売れなくなってしまったのか。

パンデミックの影響だとの見方もある。クラブが閉鎖してライブやコンサートができなかったことや、社会にノスタルジックなムードが広がったこと、これらがリスナーを古い曲へと向かわせたとみる人もいるが、「では、社会が通常運転に戻れば新曲が売れるようになるかというと、そうは思えない」と、同氏は述べる。

また、彼は「昔の曲の方が良い」、「ヒットに値する良い新曲がないからだ」といった見解も否定している。

「私は新曲を毎日2〜3時間聴いているが、ヒット曲になりうる優れた楽曲は存在している」。問題は「音楽業界が新しい才能を発掘して育成しようとしていないことだ」と主張する。

ユニバーサル・ミュージック、ソニー・ミュージック、ワーナー・ミュージックなどの主要レーベルも、「以前であれば、新しいアーティストの育成とプロモーションに注いでいたお金を、いまは古い曲に投資している」。


つまり、古い曲の方が売れる「現状を打破しようとする姿勢がなく」、また、リスナーの興奮を掻き立てる新たなムーブメントを作ろうという熱意もないと、彼は指摘している。

その一因には、「何十年も昔の古い体制を引きずったままの」ラジオ局の好みも関係しているようだ。多くの局は「新曲を流すことに消極的」。馴染みのない新曲よりも「過去のヒット曲を好んで流す傾向が強い」。

また、別の要因には、著作権訴訟のリスクを挙げている。

「曲が似ている」ことを巡って2015年に起きた大きな著作権訴訟以来、訴えられるリスクは「かつてないほど高くなっている」と書く。

せっかく巨額を投資して、さまざまな障壁を乗り越えて新曲をヒットさせたとしても、「盗作だ」と訴えられて訴訟に負けてしまえば、多額の賠償金を支払わなければならない。


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