*解説*
 「垂直背面攻撃」は高度な操縦技術を持ったパイロットが大型機を攻撃するときの最も効果的な戦法であった。
操縦の困難さに加え攻撃、避退のタイミングが難しいため熟練したパイロットでなければこの攻撃方法を成功させることはできない。
 しかし、錬度の高い零戦パイロットがこの戦法で攻撃をした場合、他の戦法には無い有利な点が幾つもあった。
まず自機の正面と敵機の上面が向かい合うため、敵機を逃すことがない。通常の急降下では敵機が自機の死角に入ってしまい、
敵機が見えなくなる恐れがある。次に自機と敵機が反航になるため相対速度が上がり、機銃弾の威力が増すことが上げられる。
また垂直に急降下するため敵機の機銃の照準も困難になる。
 零戦が単機でB24やB29などの「四発重爆」を撃墜するには、「垂直背面攻撃」でコックピットを攻撃するしかないであろう。
岩本はラバウルでのB24攻撃の際に、大型機の攻撃方法を同僚とともに深く研究していたと考えられる。
 零戦の性能ぎりぎりの高空まで酸素をくわえながら上昇して、敵機を一撃するのも岩本得意の戦法であった。
この攻撃の成功により、戦闘機隊の特攻命令も出されることがなくなり、若い搭乗員たちの命を救い士気を大いに高めたことであろう。
 プレッシャーのかかる局面で戦果を出さなければならない出撃において、戦果を出し続けるのも岩本の真骨頂といえるだろう。
この攻撃の成功により303飛行隊の名声はもちろん、海軍航空隊への国民の信頼を高めたことであろう。