令和4年春闘が25日、事実上スタートした。
労働組合の中央組織である連合は従業員の基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)2%程度を求めるが、
新型コロナウイルス禍で、関西経済の依存度が高かったインバウンド(訪日外国人客)が消滅した上、
中国向けの輸出なども回復半ばで、打撃から立ち直れていない企業は多い。「賃上げは現実的ではない」との声が上がっている。

賃上げは大企業でも明暗が分かれそうだ。国内やアジア向けのトラクターなど農機の販売が好調で、
3年12月期決算で売上高、営業利益とも過去最高となる見込みのクボタは「業績を踏まえてベアや定期昇給などを検討する」とし、賃上げに前向きな姿勢を示す。

一方、「正直、賃上げは期待していない」とあきらめ顔で語るのは、関西の鉄道業界関係者。コロナ禍で旅行や通勤の客足が落ち込んだ。
この社員は「会社の経営が苦しいのは分かっている。賃上げは現実味がない」と打ち明けた。

インバウンドの消滅は観光業界に大打撃を与えており、サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(東京都新宿区)によると、
ホテル・レジャー業の賃金水準は、令和2年の35歳年収が前年比約7・7%減の384万円程度。3年はさらに下がる見通しという。

外食業界も、がんこフードサービス(大阪市淀川区)の担当者は「ベアができる状況ではない。昇給ではなく、雇用の維持を最優先に対応していきたい」と説明する。

中堅・中小の製造業も厳しく、電子部品製造などを手がける兵庫県内の中堅企業経営者は「頑張る従業員の給料を上げたいという思いはある」としつつも、
「固定費が増える賃上げはハードルが高い。利益は期末賞与で還元したい」と語る。

大阪府東大阪市の製造業の社長は「大企業のように毎年安定して利益が出ているわけではない。業績が伴っていないのに賃上げはできない」と言い切った。

中堅・中小では、大阪市の造園業者は業績が良いものの、賃金は据え置くという。コロナ禍で業績悪化の懸念がないとはいえず「一度賃金を上げると下げられないため」としている。

関西企業は賃上げが可能な状況にあるのか。
帝国データバンク大阪支社の昌木裕司情報部長は「コロナ前に関西経済を支えていたインバウンドはなくなり、中国に重点を置いた輸出産業もまだ回復途上だ。
特に中小はコロナの影響を大きく受けており、経営者は賃上げの必要性を認識していても、対応できないのが現実ではないか」としている。

https://www.sankei.com/article/20220125-UTILFUXNSVIERESNP2DXNNG6SQ/