https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202202/0015075125.shtml

コロナ労災、申請ためらわずに 県内認定1194件 支援団体「職場感染もっと多いはず」

仕事が原因で新型コロナウイルスに感染し、労災として2020年5月〜22年1月末に認定されたのは全国で2万1495件、兵庫県で1194件に上る。22年1月末時点の県内の感染者総数に対する労災認定数は0・9%。労働者支援団体は「職場で感染することも多いのに、労災申請数が少なすぎる。周知が不十分」と指摘する。(小谷千穂)

 コロナに伴う入院は公費負担となり、健康保険の傷病手当金も出る可能性があるため、すぐに労災保険を必要としないケースが多い。労災対象かどうか判断しにくく、職場環境や症状によって申請をためらう場合もある。

 労災認定されると休業中の賃金の8割が補償され、医療費が無償になるなど労働者にとってメリットは大きい。亡くなると、遺族に年金が支給される。

 県内のコロナ労災認定の内訳は、医師や看護師、介護福祉士など医療・福祉関係が1007件と全体の8割。ほかに製造業=37件▽運輸業・郵便業=29件▽卸売業・小売業=25件−などだが、医療・福祉関係以外の請求が少なすぎるといった指摘がある。遺族請求による労災認定は10件だった。

 審査済みの請求数のうち9割以上が認定されている。感染経路が不明でも小売業の販売業務や、バス・タクシーの運転手、育児サービス業といった感染リスクの高い業務は認定されやすいという。

 兵庫労働局労災補償課の塩田晃司課長は「会社が協力してくれなくても、個別の事例を見て判断する。まずは近くの労働基準監督署に相談してほしい」と呼び掛ける。NPO法人ひょうご労働安全衛生センター(神戸市中央区)の西山和宏事務局長は「職場で請求しにくいムードがあるとも聞くが、労災は労働者の権利。国は周知を徹底させてほしい」と訴えた。

 民間の労災に相当する「公務災害」に認定された国家公務員や地方公務員は全国で927人だった。

■コロナ後遺症も労災対象に 介護施設で働く男性、強い倦怠感で10カ月休職

 兵庫県内の介護施設で働く男性は昨年8月、新型コロナウイルスの後遺症として労災が認められた。起き上がれないほどの倦怠(けんたい)感に苦しみ、今も仕事に行くことができない。国は、後遺症も労災になるとの周知を始めている。

 男性から相談を受けた「NPO法人ひょうご働く人の相談室」(神戸市中央区)によると、男性はコロナに感染した施設利用者の濃厚接触者だった。検査で陽性となり、最初はコロナ感染症で労災が認められた。

 復職して労災の休業補償がなくなった後も、コロナの後遺症の症状である強い倦怠感や、呼吸困難、体の痛みを感じ、再び仕事を休むことに。医師からは「新型コロナウイルス後遺症」との診断を受けた。

 休職は10カ月以上続いている。男性は県内の労働基準監督署に、布団から上半身を起こせない▽椅子に5分以上座っていられない−など具体的な症状を説明。後遺症としての労災が認められ、再び休業補償を受けて療養に専念している。

 国立国際医療研究センターによると、コロナ患者の4人に1人は、発症から半年後に後遺症があったといい、厚生労働省はチラシを配布するなどし、「後遺症も労災の対象となる」と強調する。

 ただ、課題もある。NPO法人ひょうご労働安全衛生センターの西山和宏事務局長は「コロナ労災は発症前2週間の行動歴を調査するため、後遺症になってからの請求はハードルが上がる」と指摘。「最初は軽症でも、早い段階で労災申請しては」と呼び掛ける。