アメリカで白人と黒人の少年2人が殴り合いのけんかをする動画が物議を醸している。けんかが激し過ぎたからではない。止めに入った警察が、黒人の子だけを押さえつけて手錠をかけたからだ。

けんかの様子が撮影されたのは2月12日。ニュージャージー州のモール内にある休憩エリアのような場所で起きた。10代のグループが集まっているなかで、2人の少年が言い争いを始め、ほどなく殴り合いに発展。警官2人が駆けつけ、少年たちを引き離した。

問題はここからだ。

警官の1人は黒人少年をうつ伏せにして床に押さえつける。その間にもう1人の警官は白人少年をソファに座らせた後、黒人少年のもとへ。最終的に、警官2人で黒人の子の体を膝で押さえつけ、手錠をかけた。

白人の子のほうは、何の制圧も受けることなくソファに座ったまま、目の前で黒人の子が手錠をかけられる様子を見ていた。

その場にいた人物が撮影したこの動画は、ツイッターですでに200万回以上再生され、警官による人種差別だとして非難の声が巻き起こっている。
抵抗もしていない子に警官2人がかりで

手錠をかけられたのはザカイ・フサイン(14)で、彼が「NBCニュース」に語ったところによれば、けんかになった相手は年上だったという。

「あっちが(僕の友達に対して)『おい、ガキ』とか『お前は俺の小さなペット』とか言って、からかってきた」のが始まりで、その友人を守るために言い返し、けんかになったと話している。

警官に押さえつけられたときは、「言われるまま動かないようにした」と振り返る。黒人である自分が警察を前に、へたに抵抗すれば命にかかわりかねないことを知っているからだろう。

ザカイの母親エボネによれば、息子にかけられた手錠は30分ほどで外され、起訴もされていない。それでも警察に対する怒りと不信は募るばかりだ。

「抵抗もしていない14歳の男子を押さえつけるのに、警官2人も必要ないはずです。相手の子は自由にさせておいて、2人がかりでうちの子に。まったく筋が通っていません」とNBCに語っている。

「常に警官を恐れながら生活しないといけないなんてフェアじゃありません。ただ、多くの人が見ているなかで起きたのは幸いだったと思っています。そうじゃなかったら、どうなっていたかわかりませんから」

動画が拡散され批判が高まったのを受け、問題の警官2人が所属するブリッジウォーター警察は内部調査を実施すると発表した。

一方、ザカイの家族は民事訴訟を起こす構えだ。代理人となったベン・クランプ弁護士は、2人の警官が「ザカイの肌の色」に基づいて判断を下したのは「あの動画を見れば明らかだ」と記した声明を発表。「警察における根絶すべき人種バイアスの一例がまた白日の下にさらされた」と指摘した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0021582d54ec350759dbc1eff03917ae69e1301a