ウクライナ侵攻で北方領土交渉は振り出し…安倍氏も非難
2022/02/25 06:40
ウクライナ情勢

 ロシアがウクライナに侵攻したことで、日露の北方領土問題を含む平和条約交渉は事実上、振り出しに戻った。先進7か国(G7)で協調して対露包囲網を築く日本政府に対し、反発するロシアが交渉への強硬姿勢を強めるのは必至なためだ。

 岸田首相は24日の参院予算委員会で、「G7をはじめとする国際社会が一致して強い意志を示すことが大変重要だ」と述べ、ロシアに対して 毅然と対応する考えを強調した。

 北方領土を巡る交渉では、安倍元首相がロシアのプーチン大統領との首脳外交で良好な関係を構築し、一時期、進展の兆しが見えた。2014年にロシアがウクライナ南部クリミアを併合した際には、欧米が経済制裁を科す中、政府は当初、交渉への影響を考慮して経済制裁を回避した。米国などから厳しい措置を求められ、政府は追加的に経済制裁に踏み切った。

 欧米の制裁で経済が停滞していたロシアは、北方領土交渉を継続することで日本からの投資引き出しを狙った。16年12月に安倍氏の地元・山口県長門市などで行った首脳会談では、北方4島での共同経済活動に向けた協議開始で合意。18年11月にシンガポールで行われた首脳会談では、歯舞群島、色丹島の引き渡しを明記した「日ソ共同宣言」を基礎に、平和条約交渉を加速化することで一致した。

 しかしその後、領土返還に反対するロシア国内の世論が高まったことなどから、交渉は 膠着状態に陥った。20年9月の安倍氏辞任後、後を継いだ菅内閣、昨年10月に発足した岸田内閣でも大きな進展は見られないままだ。岸田首相が今月17日、ウクライナ情勢を巡ってプーチン氏と電話会談した際には、交渉も議題となったものの、対話の継続を確認するにとどまった。

※略※

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220224-OYT1T50342/