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A村さん(30歳・男性、仮名=以下同)は大学を卒業後、就職した機材の製造・卸売業を営む会社で営業を担当している。営業成績は常に社内でトップクラス、後輩の面倒見も良く職場のメンバーからは慕われていた。

そしてその様子を常々感心していたB城営業課長(40歳・男性、以下「B城課長」)の肝いりで、昨年8月A村さんは営業主任に昇進した。

主任になったA村さんは、いきなり後輩10人のまとめ役として現場指導にあたることになった。B城課長の説明では、これまでA村さんが担当していた職域を2割減らし、主任としての業務時間を確保することと、給料面では基本給の変更は4月の定期昇給まで行わないが、8月から主任の役職手当として月3万円が上乗せされるそうだ。

A村さんには2年前に結婚した妻と生まれたばかりの子供がおり、これから益々生活費がかかるので、主任になり給料がアップすることを妻に話すととても喜んでくれた。

その後のA村さんは、部下とのコミュニケーションにも問題はなく、B城課長の指示を受けながら主任として順調に業務をこなしていた。ところが10月中旬、思いもよらぬことが起きた。

A村さんの部下の1人であるC竹さん(26歳・男性)が大口取引先の新規開拓に成功し、10月下旬に先方の社長や上級管理職約30名を集めて、取扱商品の使用方法についてのプレゼンを行うことになった。

本来、プレゼンに使うパワーポイントの資料や仕様書などの付属書類は営業担当者が作成することになっているが、今回はプレゼン日までの時間がない上に、作成する資料や書類数も多いため、B城課長の命令でA村さんがその準備を担当することになった

A村さんはB城課長に、

「自分も手伝いますから、準備はC竹さんも一緒に関わったほうがいい」

と提言したが、

「いやいや……彼は今大口取引先を取ってきたばかりで舞い上がっているし、他の得意先のフォローもする必要があるからそこまで手がまわらないよ。だから仕事に慣れている君がチャチャっとやってくれ。頼むよ」

B城課長に押されたA村さんはそれ以上言い返すことができず、渋々了承した。

それからのA村さんは、定時の勤務時間が終わってからC竹さんのプレゼン資料などを作り始めた。しかしその作業はA村さんが当初考えていたよりも時間がかかり、部下たちが退社しても自分は自席でパソコンとにらめっこ状態。会社を後にするのはいつも夜の9時半過ぎだった。

プレゼンの日まではあと2週間しかない。平日の残業だけではとても間に合わないので、休日に自宅で作業の続きをしようとしたが、妻子がいるので落ち着いて仕事ができず、結局は土・日も出社するハメになってしまった。

しかしそのがんばりの甲斐があって、資料や書類一式はなんとかプレゼン日の前日に仕上がった。そして当日、C竹さんはA村さんが作成した資料を使ってプレゼンを行い大成功。

帰社したC竹さんから、

「先方の社長から、『お宅の資料や製品仕様書のおかげで機材の利用方法がよく理解できました。これなら安心してお付き合いできますので、末永くよろしくお願いします』と言って頂けました」

と報告があり、A村さんはホッと胸を撫でおろした。B城課長も、

「主任、お疲れ様。よくやってくれた」

と上機嫌でA村さんを褒めちぎった。

給与明細を見て思わず目を疑う
11月中旬の給料日。10月分の給料明細書を受け取ったA村さんはその内容をマジマジと見てあることに気がついた。それはC竹さんのプレゼン資料作成のために残業や休日出勤したのにもかかわらず、残業手当や休日出勤手当が給料額の中に入っていなかったのだ。