――小林さんと言えば、出崎統監督とコンビを組んだ名作が数多くありますね。
『ガンバの冒険』、『元祖天才バカボン』、『家なき子』、『宝島』、『劇場版 エースをねらえ!』『あしたのジョー2』……。
出崎監督は、小林さんにどんな表現を求めていましたか。
小林:当時の私の作風は、やや未完成で荒っぽさがあるというものでした。
出崎さんはまず、「激しさや荒さを大事にしろ」と。
自分の気持ちを抑えて小手先の丁寧さで描いて安心するのではなくて、激しさでもって描き飛ばす。
そうすると、描き手としては、描いていない部分があることで不安が残るじゃないですか。
でも、「不安な思いが出ていればそっちでいいんだ」と。
――おお! 出崎監督のディレクションは、不安な思いまで含めて表現であるということだったんですね。
小林:そう。私のやり方は、普通好かれないんですが、彼からノーと言われた記憶はないですね。
出崎さんやスタッフには、それぞれの個性と世界観を引き出してお互い共有しようという目線があり、
皆がそれぞれに新しい実験なり発見なりをして作品に反映しようとする。
作品を通した競争と認め合いの両方がありました。
――たとえば、『ガンバの冒険』は、どのような方針で制作されましたか。
小林:ガンバというネズミの、「小動物から見た世界」は、人間の見た目と彼らの見た世界は違うはずだと。
ネズミから見たら全てが荒々しくて、激しくて、巨大で、そして怖れと驚きの対象であるはずだ……と。
ネズミの気持ちになろうとするわけですよ(笑)。
――ノロイも、ネズミから見た怖さを描かれたんですね。
小林:そうですね。この絵は、キャラクターデザインの椛島義夫さんの原画を私なりにアレンジしました。
たとえばノロイの目を曲線から直線にして恐怖を増したりもしています。
ネズミの目から見たらイタチのノロイは、巨大で強烈な存在感がある。
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