アルペン村岡桃佳2冠 スタート直後まさかのアクシデントが
生野貴紀
2022/3/6 18:20

 北京冬季パラリンピック第3日は6日、アルペンスキー女子スーパー大回転座位が北京北部延慶の国家アルペンセンターであり、2018年平昌大会銅メダルの村岡桃佳(25)=トヨタ自動車=が金メダルを獲得した。5日の滑降と合わせて2冠を達成。3大会連続出場の村岡は、通算7個目のメダルとなった。

 スタート直後、村岡の視界が揺れた。「あっ……」。板の挙動のせいで両目のコンタクトがずれたのだった。

 スキーを始めて約20年。大会はおろか、練習だってこんな事態になったことはない。何とか元の位置に戻そうとゴーグルの中で懸命にまばたきした。しかし、無情にも左目のコンタクトが落下した。村岡の視力は0・1程度。ピントは合わず、目印となる旗門は遠く見えない。かつてないアクシデントに見舞われていた。

 信じたのは自分の「記憶」のみだった。スーパー大回転はレース直前に1回だけコースの下見ができる。その時に確認し、脳内で何度も再現したライン取りを記憶だけでなぞった。

 村岡は通常もレース前に他の選手のライン取りを参考にしないという。自らの感性を信じ、それを可能にする技術力を信頼しているからだ。フィニッシュ直後、電光掲示板に自分の名前があるのが辛うじて見えた。波乱に満ちた自身初となる1大会2個目の金メダルを苦笑いで味わった。

※略※

https://mainichi.jp/articles/20220306/k00/00m/050/123000c