2022年 3月 7日 1:14 PM JST
焦点:ロシア軍「原発攻撃」の波紋、各国の建設計画に慎重論も

[ワシントン 4日 ロイター] - ロシアがウクライナにある欧州最大級のザポロジエ原発を砲撃・制圧したことで、各国の政策担当者や企業は、気候変動対策として原子炉を建設する計画に対してより慎重な態度になるはずだ――。原子力の安全性に関する複数の専門家は4日、こうした見方を示した。

ロシア軍は4日にザポロジエ原発を手中に収めたが、それまでに激戦が展開され、原発の研修施設で大火災が発生。火災は消し止められ、原子炉は問題ないと職員が宣言したものの、原発は戦時の攻撃にもろく、深刻な放射能漏れが起きる危険性があると世界中に警鐘を鳴らす形になった。

米国の非営利団体、「憂慮すべき科学者同盟(UCS)」の原子力安全問題担当ディレクター、エドウィン・ライマン氏は「原発プラントにおいて、自然災害だけでなく人為的な災害からも守る措置を講じる必要性について、もっと深刻に受け止めなければならない」と訴えた。

<業界は強気>

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ウェスチングハウスの広報担当者は「原子力エネルギーはウクライナや世界中で、安全かつ炭素ゼロの電源となっている」と話した。

原発を支援しているワシントンのシンクタンク、サードウェイは、気候変動問題の深刻化により、世界はたとえリスクがあろうとも、この先数十年のうちに原子力エネルギーを急速に拡大していかなければならないと訴える。

気候変動とエネルギーを担当するシニアバイスプレジデントのジョシュ・フリード氏は「リスクを伴わないエネルギーなどない。(ロシア大統領の)プーチン氏がダムの破壊や原発攻撃で無数の人々を殺害しようと思えば、できたはずだ。だが、原発プラントは信じられないほど安全だというのが現実だ」と言い切った。

米国の業界団体、原子力エネルギー協会(NEI)はロイターに、原子炉は安全だと信じており、ロシアのウクライナ侵攻は欧州が原子力発電能力を拡大する必要性を高める方向にしか作用しないとの見解を表明した。ロシアは現在、欧州の発電所向けの主要な天然ガス供給者だ。

NEIの政策動向・公共問題担当シニアバイスプレジデント、ジョン・コテック氏は「過去数週間の悲劇によって、米国と協力して次世代型原子力エネルギー開発に取り組むことへの関心は、高まる一方になる」と自信をのぞかせた。

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https://jp.mobile.reuters.com/article/amp/idJPKBN2L40A6