非鉄金属ニッケルの急騰劇でついた「1トン10万ドル」の最高値は幻に終わる可能性が出てきた。世界最大の金属取引所、ロンドン金属取引所(LME)は8日、ニッケルの取引を停止したうえで、その日の取引を全て取
り消しにすると発表した。背後には中国大手メーカーがニッケル売りで巨額損失を出し、影響が広く及びかねなかったことがあるとみられる。だが、取引帳消しという「禁じ手」は市場の信頼を深く傷つけかねない。
ステンレスの原料などに使うニッケルの相場は日本時間8日、前日比2倍を超える1トン10万ドル超に急騰した。だがその日の午後5時すぎ、LMEは突如ニッケルの取引を停止。さらに深夜、同日の取引停止までに市場で成立した全ての取引を「追って通知があるまで取り消す」と発表した。
中略
禁じ手に踏み込んだ背後には、巨額の取引損失で窮地に立たされた中国大手の存在があるとみられている。米ブルームバーグ通信の報道によると、世界有数のニッケル・ステンレスメーカーである中国の青山控股集団が大量のニッケルの売り持ち高を保有し、損失が膨らんでいたという。
中国メディアの財聯社はアナリストの見方として「持ち高が強制的に決済されると最大120億ドル(約1兆4千億円)の損失が生じる可能性がある」と報じた。仮に同社が破綻となれば、市場全体に影響が及んだ可能性が
高い。「LMEは市場のルールと波及リスクの阻止をてんびんにかけて後者を選んだ」(みずほ銀行の能見真行氏)との声もある。
ニッケル「10万ドル」幻に? 「最高値」取り消し検討:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58938240Z00C22A3ENG000/