新型コロナウイルスに感染すると脳に変化が起こる可能性があることが、イギリスなどの研究で明らかになった。

研究チームは、感染前後のMRI(磁気共鳴断層撮影)の画像にかなりの違いを発見した。

軽症の場合でも、脳全体の大きさがわずかに縮小し、嗅覚と記憶に関連する部分の灰白質が減少していたという。

研究者らは、この変化が永続的なものかどうかは分からないものの、脳は回復する可能性があると強調している。

今回の研究は、学術誌「Nature」に掲載されたもの。

研究を主導した英オックスフォード大学ウェルカム統合神経画像センターのグウェネル・ドゥオー教授は、
「私たちは主に軽度の症状について研究していたので、患者と非感染者を比較した時に、脳にいくらかの差異が実際に生じていたことや、
脳の変化の度合いを見ることができたのは、かなり意外だった」と述べた。

イギリスのUKバイオバンク計画では、15年間にわたり50万人の健康状態を追跡調査してきた。パンデミック前のスキャン画像の記録も残っている。
そのため、新型ウイルスが健康にどのような長期的影響を与えるのか、研究できる貴重な機会を得ている。

研究チームでは、バイオバンクの対象者について、以下の調査を行った。
新型ウイルスに感染した401人について、感染から平均4カ月半後にMRI検査を受けてもらった COVID-19に感染していない384人についても、
同様にMRI検査を施した

その結果、以下のことが明らかになったという。
COVID-19に感染したことのある対象者の脳全体の大きさは、0.2〜2%収縮していた 脳のうち、嗅覚をつかさどる領域や、
記憶に関する領域の灰白質が減少していた 最近になって新型ウイルスの症状から回復した人は、複雑な知能タスクをこなすのに少し苦労していた

しかし、この変化はもとに戻せるものなのかどうか、また、本当に心身の健康や快適な生活に影響する変化なのかどうかは、まだ分かっていない。

ドゥオー教授は、「まず、脳は本当に可塑(かそ)的、つまり、自己治癒力を持つということを念頭に置く必要がある。
時がたてば、感染による有害な効果が緩和する可能性は十分にある」と指摘する。

灰白質の減少は特に、脳の嗅覚領域で顕著だった。しかし、ウイルスがこの領域を直接攻撃するのか、それとも新型ウイルス感染者が
嗅覚を失ったことで嗅覚領域が使用されなくなった後、細胞が死滅するのかは不明だ。

また、新型ウイルスのすべての変異株が、このような損傷を引き起こすのかどうかも分かっていない。

このスキャン調査は、本来の新型ウイルスとアルファ株が流行し、嗅覚と味覚の喪失が主な症状だった時に実施された。

しかし、最近になってオミクロン株に感染した人からは、味覚・嗅覚喪失の報告は劇的に減っている。

https://news.livedoor.com/article/detail/21815379/