https://www.asahi.com/sp/articles/ASQ3C3D9JQ34PTIL003.html
「ああ他人事じゃないんや」 部落解放子ども会が支えた自分のルーツ
部落差別の根絶をめざした全国水平社の創立から、3月で100年を迎えた。この半世紀、差別と貧困を抱える被差別部落の子どもたちを支えてきたのが「部落解放子ども会」だ。1970〜80年代の最盛期に比べると活動は縮小したが、「人の尊厳を大切にする」という水平社宣言の精神に基づいた取り組みが各地で続く
「消えてしまいたい」 悩んだ経験を糧に
窓の外が真っ暗に暮れた平日の夜、10人ほどの高校生たちがテーブルに広げた軽食を囲み、それぞれに談笑する。
大阪府松原市の人権交流センターでは月に1度、地域の解放子ども会の集まりが開かれてきた。
高校3年の男子生徒(18)も常連のメンバーの一人。別の高校に進んだ幼なじみもいて、近況報告に花が咲く。時々、部落差別や他の人権問題についても考えを語りあう。
小学生のころ親に言われて、地域の子ども会に通い始めた。週1回ほど集まり、小学生時代は遊び、中学生になると勉強会が主な活動だった。
男子生徒の大切にしてきた活動が「聞き取り」だ。地域の先輩や地場の食肉産業に携わる大人から、地域の歴史や差別について聞く。
「幼いころは正直めんどくさかったけど、だんだん『ああ、他人事じゃないんや』と思うようになった。もし自分が差別を体験した時、ただ相手に手を出して終わるのか、ちゃんと言葉で考えを伝えられるのか。大人の経験を聞くことで、全然違ってくる」
以前、彼女ができた時、自分が被差別部落出身だと打ち明けた。彼女は「そんなん関係ないやん」と言った。自分を思って言ってくれた言葉だが、ずっと考え続けてきたルーツについて「関係ない」の一言で済まされることに、わだかまりが残った。