上記東京地判令和3年6月8日は、「Cてまじで慢心すごいわ 成金の品のなさ出てるな」というVtuberに対する掲示板での批判について、
Vチューバーとしての配信動画(作品)を見た投稿者が「慢心」、「成金」、「品がない」との否定的な批評をしているとみるのが通常であるところ、
作品又はその演者に対する批評として受忍限度を超えるような程度には至っていないとした。

すなわち、「配信動画に限らず、芸術・芸能作品に対する批評は最大限保障されるべきであることはいうまでもなく、
かつ、不特定又は多数である社会一般に作品を提供する者は、その帰結として肯定的・否定的な批評を受けること自体は当然甘受すべきものであるから、
その批評が人身攻撃に及ぶなど批評(意見ないし論評)の域を逸脱しているなどの場合を除き、不法行為を構成するとはいえない」という規範を立てた上で、

当該Vtuberは「宝石、宝、お金が大好きで、海賊になって宝を探すのが夢。」とのキャラ設定を自ら行い、高級な食事のエピソードを配信動画のテーマとするなどしているのであるから、
「慢心」「成金」「品がない」などの感想を一部の者が抱くことはあり得ることであって、
その表現も、原告に対し否定的ではあるものの、対象者個人の具体的なエピソードや家庭環境などをもとに人格攻撃しているものとも解されないから、
表現者として作品を提供する原告として受忍すべき限度の範囲内にあるというべきであるとした。


https://keisobiblio.com/2022/01/25/matsuo40/