【モダン・ラブ】ジェンダーロールに囚われた男と付き合ってみた
愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」。
読者が寄稿した物語を、毎週日曜日にお届けします。

「大の男なんだから俺が金の管理をしないと」と彼は言う。

「そうね」。不安で動揺しながら答えた。そして金融コンサル会社のパートナーである私はこう思った
──お金の管理なら毎日してるんだけどね。

普通なら私は「俺は大の男だ」なんて言う男とは付き合わない。
「今夜は私が払うよ」と言ったときに、何も言ってこないような男を好きになる。
そういった男たちは私のルックスより先に、私の知性にひかれていた。少なくとも口ではそう言った。

だけど離婚したあとぼんやりしていた私は、気づけば違うタイプの男を好きになっていたのだ。

男こそがお金の管理をすべきだと信じている男が存在することは、知っている。
ショックだったのは、彼がそのことをなんのためらいもなく認めたことだ。

もっとも、彼が古いジェンダーロールを信じていることは、もとより明らかだった。
セックスの時もこう言った。「男の俺がリードしたい」
彼のてらいのなさには驚かされることもあるけれど、魅力的だとも思う。彼は自分の欲求に自信を持っているのだ。

前の夫はフェミニストを名乗っていた。
しかし結婚生活のなかでは、それは私が彼よりはるかに稼ぎがいいことを許せるということ、私の収入で贅沢ができることを許せるということ、
私が家のローンや子供たちの授業料、その他諸々の経費を払うことを許せるということを意味していたようだ
(当時の彼は小さな小売業を始めたばかりで、まだ給料は出ていなかった)。

こうした経験をしているわけだから、お金の管理をするのは男の仕事だ、なんて主張する男を、普通は相手にしなくなるに違いない。
だが私は逆だった。家族に対して金銭面で責任をもとうとする男を、私は求めるようになったのだ。
私にはそれが必要ではなかったにもかかわらず。

平等な関係という幻想が崩れ去ったあと、私はそれを父権的な保護(男が家を守ってくれる)という幻想によって、埋め合わせたかったようだ。
https://courrier.jp/news/archives/284748/