著者の渡辺清氏は1925年生まれ。16歳で自ら志願して海軍に入隊、大和と並んで世界最大最強と謳われた戦艦武蔵に乗り組んで米軍と戦った。

武蔵は1944年10月に撃沈されたが渡辺氏はかろうじて生き残り、その後配属された駆逐艦の艦上で8月15日の敗戦を迎えた。この日のことを、氏はある対談で次のように語っている。(『現代の眼』1962年12月号)

敗戦は挫折というよりも、ナメクジに塩をかけると溶けますが、あんなふうに自分自身が崩れていく実感がありました。

この書は、渡辺氏が故郷の村に復員した1945年9月から翌4月までの日記を収録したものだが、純粋に「現人神」昭和天皇を信仰する軍国少年のまま帝国軍人となっていた氏が、敗戦の衝撃に七転八倒しながら天皇制の呪縛から醒めていく、その過程を記した稀有の記録ともなっている。
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