大手企業が国内製造拠点「閉鎖・集約」加速の深刻さ…失業増で地方経済にも大打撃

 大手企業が国内製造拠点である工場の閉鎖・縮小を加速させている。2021年に国内工場の製造拠点を閉鎖・縮小した企業は40社に上り(上場する製造業は約1500社)、コロナ前(17社)の約2.4倍と大幅に増加しているのだ(東京商工リサーチ調査)。

■日本製鉄やブリヂストンも

 拠点工場を閉鎖する大手企業を見ると、日本製鉄は約60年の歴史を持つ瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)の高炉2基と、関西製鉄所和歌山地区の高炉1基を9月で閉鎖、さらに24年度末に鹿島製鉄所(茨城県)の高炉1基の休止を発表している。日本たばこ産業は香川県の3カ所の食品工場を閉鎖。ブリヂストンは埼玉県の騎西工場、LIXILは群馬県の前橋工場を23年3月末での閉鎖を発表している。

 こうした状況は2022年に入っても加速し、ENEOSの和歌山製油所、ストッキングのアツギは50年以上の歴史を持つむつ事業所(青森県)と盛岡工場(岩手県)の2工場を5月末に、アサヒビールは神奈川工場など2工場の閉鎖を発表している。大手企業の拠点工場の相次ぐ閉鎖には、ふたつの流れがあると東京商工リサーチの友田信男情報本部長がこう言う。

「アツギは業績不振から生産コスト削減のため、中国山東省の2工場に生産を集中した体制を取る。日本製鉄は工場施設の老朽化で国内の既存工場を閉鎖し他工場に生産をシフトして拠点の集約化を図る。大型の設備投資を避けコスト削減を優先しています。今後も国内拠点を閉鎖して海外工場に集約する企業と、国内拠点に集約する企業とに分かれるでしょう」

■失業増は地方経済に痛手

 そこで課題となるのが既存工場で働いていた従業員のその後の雇用だ。いずれの企業も地域経済に重要な位置を占めている。拠点工場の閉鎖は関連する関係会社などサプライヤーに大きな影響を及ぼし地域経済に大きな打撃を与える。日本製鉄の呉製鉄所は協力会社も含めると、3000人の従業員のうち約半数の1500人が仕事を失うことになった(約1000人は他の製鉄所へ配置)。呉市にとっても最大の税収源がなくなり、その影響は計り知れない。

 アツギのむつ工場では500人以上の従業員が職を失う。人口5万人のむつ市にとって市の存続さえ危ぶまれる事態だ。呉製鉄所の工場閉鎖では、税収の減る広島県に日本製鉄が10年間で合計21億円を支出するそうだが、他企業がこれに倣う可能性は極めて低い。

 先の友田氏がこう指摘する。

「工場の閉鎖は数千人〜数万人の労働者が居場所を失い、サプライチェーンの寸断も始まっています。製造業からデジタル化によるサービス業への労働力シフトが進み、さらに専門技術を持つ人材の海外流出はさらに進むでしょう。その結果、日本の技術力の継承の流れが止まることが懸念されてきています」

 モノ作りの日本が大きく変わりつつある。
https://news.yahoo.co.jp/articles/46c9ba1aeb975d17c597c8bd7e32d058df8580a2