日本の総人口が減少に転じたのは、2008年とも2010年ともいわれます。それからまだ10年ちょっとしかたっていないのですが、産業界にはもっとずっと以前から、人口減の影響が及んでいました。

 その理由は、総人口に先んじて生産年齢人口(就労可能性が高い15~64歳の人口)は1996年からずっと減少し続けていたからです。

現在まででその減少数は約1250万人。生産年齢人口の約2割にもなる大きな数字です。この苦境を、産業界は以下の3つの方法でしのいできました。

1. 衰退産業からの人材流出
2. 女性の労働参加
3. 高齢者の就業継続

1.の「衰退産業」には「工場の海外移転が続いた製造業」「公共事業予算の縮小により事業縮小した建設業」「規模集約による効率化や輸入への依存が強まった農業」の3セクターが入ります。製造業は約400万人、建設業が約200万人、そして農業が約150万人と3産業トータルで約750万人の人材流出が起きました。

 続いて2.の「女性」と3.の「高齢者」については、非正規雇用がその中心となりましたが、1996年から2020年までの間に女性が約450万人、高齢者は約500万人も就業者を増やしています(衰退産業・女性・高齢者での重複カウントが含まれる)。

 その結果日本は、生産年齢人口が25年で約1250万人も減る中で、総就業者数は逆に約350万人も増やせていたのです。ただ、こうした過去の労働シフトの成功が記憶に色濃く残るため、日本の企業はこれから迎える絶望的な人材不足に対しても甘く考えているきらいがあります。

 ここではっきりとさせておきます。

 過去25年の労働シフトは、これからもう全く通用しない時代になります。非ホワイトカラー領域の人材確保が、企業の生死を分かつポイントになるでしょう。

https://business.nikkei.com/atcl/plus/00035/033000002/