「尼崎連続変死事件」の謎 #1

 2011年11月に監禁していた女性への傷害容疑で、主犯の角田美代子が逮捕されたことが、死者・行方不明者が10名以上にのぼる「尼崎連続変死事件」の端緒となった。

 小さな繋がりをきっかけに相手の家庭に乗り込み、美代子による暴力を伴った巧みな心理操作で、家族内での不信感を煽って分断。マインドコントロールともいえる状況下で、互いに密告・虐待を行うようになった結果、次々と死者が出たという特異な事件である。

2名の行方不明者の消息が判明したとの情報はない

 12年12月12日に美代子は兵庫県警本部内の留置場で自殺し(死亡時64)、その後に開かれた裁判では、彼女が作り上げた「角田ファミリー」のうち7名が殺人などの罪で裁かれ、無期懲役から懲役15年までの判決を受け、刑が確定している。そのため現在は、全員が服役中だ。

 この事件を捜査していた兵庫、香川、沖縄各県警の合同捜査本部は、14年3月13日に解散しており、それをもって捜査は終結した。

 しかし、その際に今後も行方を捜すとされた、2名の行方不明者の消息が判明したとの情報はない。

 この2名とは、14年2月17日に兵庫県警により公開手配された、森本賢吾さん(手配時37)と桐原信枝さん(同61)である。

 両者はそれぞれ「角田ファミリー」による監禁生活を送っていたが、賢吾さんは00年1月頃(手配内容。著者の調べでは1999年12月頃)、信枝さんは03年10月頃を最後に、行方がわからなくなったとされ、それぞれの親族が、12年6月に尼崎東署に行方不明届を出している。

 私はかつて、この「尼崎連続変死事件」について、『新版 家族喰い -尼崎連続変死事件の真相-』(文春文庫)という本を執筆した。
その際に行った取材と、今回新たに加えた関係者の証言によって、彼らがどのような状況に置かれ、姿を消したのかということを、改めて検証していきたい。

美代子の伯母の葬儀がすべてのはじまり
https://bunshun.jp/articles/-/54023