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集合住宅のゴミ捨て場に430人分の住所、電話番号、家財リスト…「引越のサカイ」社員が家に持ち帰りポイッ

 引っ越し大手のサカイ引越センター(堺市)の利用者の住所や電話番号などの個人情報延べ約430人分が3月、川崎市宮前区の集合住宅のごみ捨て場に出されていたことが、関係者への取材で分かった。同社は事実を認め「真摯しんしに対応する」としているが、4月施行の改正個人情報保護法では、より厳しい管理が必要とされる。専門家は「第三者に拾われ、外部の人が個人情報を見られる状態は、漏えいに当たる」と指摘する。
◆シュレッダーかけるはずが
 関係者によると、資料の大半は依頼者の名前や元の住所や引っ越し先の住所、家財や連絡先などが書かれた「御見積書」で、ベッドや冷蔵庫の大きさなどを記した家財リストもあった。同社職員が提出したものとみられる退職届も含まれていた。
 同社は本紙の取材に、この事実を把握していると認めた。従業員1人が本来シュレッダー処分すべき書類を自宅へ持ち帰り、一般ごみとして捨てていたという。
 「個人情報の記載書類については、社内マニュアルに基づき、シュレッダーなどをして持ち帰らないように指導教育を行っている」と説明。外部からの通報を受けて回収したといい、「詳細は調査中だが、お客さまへ真摯に対応を行ってまいります」と回答した。
◆ストーカーやセールスに悪用されたら…問われる企業の情報管理
 個人情報保護法では、氏名や生年月日など特定の個人を識別できる情報の第三者への提供や目的外での使用を制限し、事業者に管理を義務づけている。4月に全面施行された改正個人情報保護法により、事業者は流出事故が起きた場合、政府の個人情報保護委員会への届け出や、被害者への通知が義務化された。
 同委員会への報告義務があるのは、民間企業では1000人を超える漏えいの場合とされる。今回の事例は当てはまらない可能性もあるが、明治大の湯浅墾道はるみち教授(情報法)は「住所を知られたくない人は多い。女性で単身の場合はストーカーなどの被害に遭うこともあり得る。電話番号も漏れているので、セールスに利用される可能性もある」と問題視する。
 神奈川県逗子市で2012年に起きたストーカー殺人事件を巡っては、市役所が加害者側に住所を漏らした翌日に男が犯行に及んだ。14年のベネッセコーポレーション(岡山市)の個人情報流出事件では、被害者がベネッセ側に賠償を求める訴訟が複数起こされている。
 湯浅教授は「サカイ引越センターの情報管理の全体が問われる問題だ。インパクトが大きい」と指摘。「人に知られたとなれば引っ越しをする人が出てくる。プライバシーの侵害をサカイ引越センターとしてどこまで補償するのかも問われる」と話した。