日本は、ウクライナ侵攻の前から積極財政でコロナ禍を乗り切る方向性が示されていたが、第3次石油危機も指摘されるなか、今回の事態をどう乗り切るのか。

 自民党きっての積極財政論者で、昨年12月1日、党本部で初会合を開いた財政政策検討本部の西田昌司本部長に、対処法と見通しを聞いた。

(中略)

 ――矢野康治財務事務次官が、月刊誌に「このままではタイタニック号と同じ」と、財政破たんの危機を訴えました。

 「自国通貨で発行した国債が返済不能になることはない、と財務省も公的に認めているのに、トップがとんでもない発言をしました。
ただ、財政健全化は財務省のポリシーで、役人としてはその立場を堅持するしかない。
役所以外にも、家計と同じ発想で、『借金はいけないことだ』と、思い込んでいる政治家、経済学者が多いのも事実です。
そこでまず『貨幣とは何か』を議論。財源に制約はないことを確認する必要があります」

 ――貨幣とは何ですか。

 「最も大切なのは、貨幣は信用創造によって作られることです。銀行が人におカネを貸すことによって信用創造は起きる。
信用創造によって経済は始まり、国を活性化させる。銀行が預かったおカネを貸すのは資金運用で、信用創造ではありません」

■ウクライナ侵攻の影響をどう見る?
 積極財政派の理論的支柱になっているのが、「自国通貨建ての国債で政府が破たんするこることはない」
「高インフレになるまで累積債務の大きさは気にする必要はない」といった国債発行を積極的に肯定する現代貨幣理論(MMT)である。西田氏はMMT論者としても知られる。

 日本の国債発行残高約1000兆円。この空前の債務が重くのしかかるが、MMTは、古い国債を新しい国債で入れ替えているだけだからと、債務残高を気にしない。
心配すべきは利払いが急増するインフレ。物価高に追い打ちをかけるウクライナ侵攻とその長期化は大丈夫なのか。

 ――ロシアのウクライナ侵攻で物価が上がっています。巨額債務の怖さはインフレですが大丈夫でしょうか。

 「日本銀行が、異次元の金融緩和を進めて9年になりますが、まだ目標の2%に到達したことはなく、今回の事態を迎えても、今のところ2%を超えるかどうかという予測です。
私は、4~5%程度のインフレ率は許容範囲だと思っています。ウクライナ侵攻が実体経済に及ぼす悪影響はあるでしょう。その場合、必要なら、財政的措置を取るべきだし、まだまだ十分に可能です」

 ――石油・天然ガスの急騰、あるいは侵攻の長期化により、許容範囲に近付くか超える場合はどうでしょうか。

 「財政拡大を減らすことも含め、調整のやり方はいろいろあります。国民への公正な分配を行い、貧富の差が極端に生じないよう税による調整も必要になります。
具体的には消費税より、法人税、所得税の増税や税率変更などです」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92974