── 音楽でも映像でも、日本は韓国のエンタメに差をつけられているという話はよく耳にします。お二人は今、日本のエンタメ業界に対してどのような思いを持っていますか?

黒田:stuのCOO(ローレン・ローズ・コーカー氏)が内閣府の知的財産戦略本部の委員を務めていて、話をよく聞きます。日本の映像制作がアメリカ、韓国、中国、インドなどと比較しても明確に遅れていることは、政府でもやっと議論のテーブルに上がり始めているところです。

一方で、エンタメ業界の人がよく口にする「韓国は政府が支援したから成功したんだ」という論調には疑問もあって。海外へのプロモーション支援では差がついているのは確かですが、制作支援に関して言うとそこまで差はないんじゃないかというのが僕の実感です。

一方で、コンテンツ産業の「教育」や「施設」に対する、長期的な投資をしている点は、明確に日本にはない特徴ですね。この辺りはJETROの調査資料によくまとめられています。

── 韓国政府の支援制度には例えばどのようなものがあるのでしょうか。

黒田:代表的な機関だと「韓国映画振興委員会(KOFIC)」という映画支援を担う機関や「韓国コンテンツ振興院(KOCCA)」というコンテンツの活性化を担う機関があります。

でも日本でもVIPO(映像産業振興機構)が実施しているものなど、似たような制度はあるんです。政府も周知をもっとして良いとは思いますが、民間側ももっとキャッチアップすべきなんじゃないかなあと。

実際、僕らも普通にアプライしてかなりの補助金や助成金が受けられています。

── 韓国は政府が支援してるからすごい、というのは安直に過ぎると。

日高:日本はダメだと言われますが、環境は恵まれていると思うんです。ダンスや歌を練習する場所も揃ってるし、子どもが夕方以降に一人で出歩けて、スクールがこれだけある国って日本くらいしかない。

一方で、幼い頃からワールドスターになることを夢として見づらかったことも確かだと思います。

元々、事務所間の情報共有も少ないので、各事務所やアイドルが成功すると、その一強体制や競合への忖度、踏襲に次ぐ踏襲が生まれてしまう。どこかで一度成功したモデルの焼き直しこそが正解みたいになってしまったのが、もったいないなと。

せっかくガラパゴスと揶揄(やゆ)されるのだったら、逆にガラパゴスならではの混ざりが生まれてたら良かったのかもしれない。

韓国やアメリカがすごいというだけで終わらせるのではなく、何がすごいのか。逆に日本ではなにができるのかをトライし、エラーを蓄積し、会社を超えてお互いに協力・切磋琢磨することが重要だと思います。

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