培養した脳に眼杯と呼ばれる器官を備えた原始的な目を形成させることに成功したとの論文が、発表されました。
人の脳を研究するために実験室内で作られたミニチュアサイズの脳と目には、光に反応する神経組織の活動などが確認されたことから、今後は網膜疾患の研究や医療用の網膜の製造に役立つと期待されています。

人間のiPS細胞を用いて実験室内で作られた脳は「脳オルガノイド」と呼ばれており、過去の研究では豆粒サイズの脳オルガノイドから胎児のような脳波を検出することにも成功しています。

かねてから眼杯や眼胞などの原始的な目の組織の発達について研究していたドイツ・デュッセルドルフ大学病院のジェイ・ゴパラクリシュナン氏らの研究チームは、
「目の組織を直接培養するのではなく、脳オルガノイドから目を発生させてはどうか」と考案し、まず4人のドナー由来のiPS細胞を準備しました。

そして、以前開発した「幹細胞を神経組織に変化させる技術」を応用し、培養液にビタミンAの一種である酢酸レチノールを加えて、視神経の一種である視神経乳頭を持つ脳オルガノイドを作成しました。

この脳オルガノイドを培養した結果、合計314個のうち72%で視神経乳頭を形成させることに成功。早いものは作成から30日で眼胞を形成させ、
60日後には成熟した視神経乳頭を持つようになりました。この脳オルガノイドの発達速度は、ヒトの胎児における眼球の発達時期とちょうど一致しているとのことです。

研究チームが作成した脳オルガノイドはさまざまな種類の網膜細胞を備えており、水晶体や角膜といった組織のほか、光に反応して活動する神経細胞のネットワークも確認されました。
研究チームは、視神経乳頭の培養自体は以前から行われてきたものの、脳オルガノイドから視神経乳頭を生じさせた研究はこれが初めてとしています。

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https://gigazine.net/news/20210918-mini-brains-rudimentary-eyes/