https://noexit.jp/tn/doc/t4.html

あるニワトリ小屋で、飼育員が毎日、
エサを決まった時間に同じ量だけを与えていた。

飼育員は、非常に几帳面な性格だったらしく、
何年間も正確に同じことをしていた。

さて、小屋の中のニワトリたちは、
なぜ毎日、同じ時間に同じ量のエサが放り込まれるのか、
その原理や仕組みをまったく想像しようもなかった。

が、とにかく、毎日決まった時間に、同じことがおきるのだ。

いつしか、ニワトリたちは、
それが「確実に起きること」だと認識し、
物理法則として理論化しはじめた。

そして、その確実な理論から、
関連する法則を次々と導き出していき、
重さや時間の単位も、
エサの分配についての経済や政治の理論もすべて、
毎日放り込まれるエサを基準にして行われた。

それは妥当なモノの考え方だ。

だって、それは
「確実に起きること」であり、
「絶対的な物理法則」なのだから。

しかし、ある日、ヒネクレモノのニワトリがこう言った。

「でもさあ、そんなの、明日も同じことが起きるとは限らないんじゃないの?」

そんなことを言うニワトリは当然、他のニワトリたちから袋叩きにあう。

「ばぁーか、お前なに言ってんだよ。
いいか?この現象はなあ、
この世界ができてから、ずーっと続いているんだよ。
何十代も前のじいさんが書いた歴史書を読んでみろよ。
それからな、この現象をもとにして書かれた理論や、
学術論文をちゃんと読んでみろよ。
みんな、矛盾なく成り立っているだろ?
そしてそれは、観測や実験によって間違いなく確かめられているんだよ!
それをお前は何の根拠もなく疑うなんてな。
そういう無知から、擬似科学やオカルトが始まるんだ。
現実から目を背けることばかり考えてないで、
ちゃんと勉強した方がいいぞ。」

しかし、ある日、
不況の煽りをうけ長年働いた飼育員がリストラとなり、
ニワトリへのエサやりは、ズボラなアルバイトの役目となった。

次の日、ニワトリたちが、何十代もかけて構築した科学のすべては吹っ飛んだ。