https://news.yahoo.co.jp/articles/66f7a6748093a91edae43c0d19e2ab88fd9c64de
「自閉症・情緒障害特別支援学級」増えるニーズ、都内37自治体が未設置
発達障害などのため、他人との意思疎通に困難を抱える子どもが学ぶ「自閉症・情緒障害特別支援学級」。地域の小中学校に設置するかどうかは自治体の判断に任されており、1学級も設置していない自治体も少なくありません。通常学級でうまくいかず、かといって既存の特別支援学級にも入れず、はざまで困っている子どもがいます。
地域で大きく異なる設置状況
小学校や中学校に設置されている特別支援学級は、知的障害、肢体不自由、身体虚弱などの障害種別になっている。文部科学省の2021年度学校基本調査によると、小学校には全国で計5万909学級、中学校には計2万1635学級が設置されており、そのうち自閉症・情緒障害特別支援学級は小学校2万3368学級、中学校9622学級と半数近くを占める。それぞれ12万266人、4万4842人の児童生徒が通っている。
〈特別支援学級の対象障害種〉
・知的障害
・肢体不自由
・病弱及び身体虚弱
・弱視
・難聴
・言語障害
・自閉症・情緒障害
ただ、学校の設置主体である自治体に特別支援学級の設置義務はなく、設置状況は地域によって大きく異なる。都道府県別にみると、自閉症・情緒障害特別支援学級の数(公立小学校)は、最も多い大阪府が2484学級なのに対し、最少の東京都は119学級となっている。
都内でも区市町村によって差がある。都の21年度公立学校統計調査によると、青梅市が3校23学級、多摩市が4校16学級、町田市が6校15学級を設置している一方で、37区市町村が設置ゼロとなっている。子どもを同学級に入れるために、設置している自治体に転居する家庭もあるのが実情だ。
府中市も設置ゼロの自治体の一つ。同市に住む40代の女性は、同市に自閉症・情緒障害特別支援学級の設置を求めるオンライン署名をChange.org( https://www.change.org/ja )で集めた。
小4の息子がADHD(注意欠如・多動症)とディスレクシア(読み書き障害)で特に書字に困難を抱えている。聴覚過敏のため、イヤーマフをしていても、ざわざわした教室に1時間いるだけで疲れてしまう。知的な遅れはないが、板書をノートに写すことができない。コロナ禍の一斉休校の後、不登校になってしまい、現在は女性が仕事をやめ、家で一緒に勉強している。女性がiPadで教科書の問題を撮影し、学習アプリに取り込むと、息子はキーボードで文字や数字を入力して解答することはできる。ただし、「一斉授業の教室では、読み書きの専門的なサポートがあったとしても、聴覚過敏で教室に長くいることができない」という。
女性の息子は不登校になる前から、週2時間、別教室で特別な指導を受ける「通級指導」を受けており、そこでは落ち着いて過ごすことができているという。女性は「通常学級で過ごすのが難しく、かといって既存の特別支援学級は対象外で入れない子はいる。週に2時間の通級指導では足りないし、そもそも(社会性を身につける)ソーシャルスキルトレーニングが主で教科学習はない。すべての子どもに『学び』を保障してほしい」と話す。
昨年、同様の希望を持つ市内の保護者数人と親の会を立ち上げた。まずは市内の不登校児の不登校の原因や発達障害の有無についての実態調査を求め、今月開かれる市議会に向け陳情を提出した。
増える「通級指導」
全国で人口が最も多い東京都で、なぜ自閉症・情緒障害特別支援学級は少ないのか。東京都教育委員会の小川謙二・特別支援教育企画調整担当課長は「都は1970年ごろから全国に先駆け、自閉症・情緒障害の子どもに対する通級指導をやってきたということが大きい」と説明する。
通級指導とは、普段は通常学級で学んでいる子どもが週に数時間、特別支援学級に通って個別のニーズに応じた指導を受ける仕組みで、1993年に制度化された。都は2016年度から全ての公立小中学校に通級指導を行う「特別支援教室」の設置を進め、特別支援学級がない学校でも他校に行かずに通級指導を受けられるようにした。
都の2021年度公立学校統計調査によると、都内の小学校の特別支援教室で通級指導を受ける児童は2万6659人で、16年度の1万2633人の倍以上となっている。都教委は昨年3月に出した特別支援教室の運営ガイドラインで、指導期間は原則1年と定め、成果を振り返らないまま指導を何年も継続することがないようにした。この「原則1年」が学校現場や保護者の間では絶対的なものと受け止められているケースもみられるが、「子どもに新たな課題が出てきた場合などは改めて目標を立て、指導を続けることもありうる」という。