中国外交が敗北を重ねている。南太平洋の島嶼(とうしょ)国との安全保障協力で合意に失敗したほか、巨大経済圏構想「一帯一路」でも、スリランカが事実上の債務不履行(デフォルト)となるなど各国が借金漬けだ。さらにロシアのウクライナ侵攻で欧州でも反中感情が高まる。習近平国家主席は「中華帝国の偉大な夢」を抱くが、「脱中国」が加速しているのが現実のようだ。

「強固だった関係が壊れている」と語ったのは、スリランカで先月、新首相に就任したウィクラマシンハ氏だ。

同国ではラジャパクサ大統領らが港湾開発などを中国企業と進める方針を示すなど、親中外交を進めてきたが、4月に対外債務の支払い停止を発表した。一帯一路の拠点として実施してきたインフラ整備のために背負った借金がふくらみ、財政難に陥ったことも一因とみられる。

米シンクタンク、世界開発センター(CGD)は18年の時点で、一帯一路のインフラ投資計画があったパキスタンやモルディブ、ジブチ、ラオス、モンゴル、モンテネグロ、タジキスタン、キルギスの8カ国について債務問題に懸念があるとのリポートを公表していたが、すでに現実のものとなっている。

中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏は「中国はパキスタンの政情不安を背景に一帯一路の要衝だったグワダル港を諦め、最大都市カラチに港湾整備を移した。モルディブも親中派大統領の失脚でインドが勢力下に収めた。次にスリランカで大統領打倒の動きになれば、中国には大きなショックだ」とみる。