https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20220614-OYO1T50009/

顧客からの暴言や不当要求といった迷惑行為「カスタマーハラスメント」(カスハラ)の被害が民間にとどまらず、自治体でも起きている。職員の約5割が被害を経験したとの調査結果があり、 執拗しつよう に繰り返されるのが特徴だ。業務への支障が大きいとして、訴訟など法的対応に踏み切る動きも出ている。(久米浩之、増田尚浩)
休職・退職
「税金を下げるよう求めて一日中居座られる状態が1年ほど続いた」「電話のクレームが1日10回以上ある」……。全日本自治団体労働組合(自治労)はこうした公務員への行為をカスハラとし、2020年に全国の自治体や病院の職員ら約1万4000人に実施した調査(設問によっては複数回答)では深刻な実態が明らかになった。

職員を守るために、自治体は対策を迫られている。

 大阪市は今年3月、長年暴言や苦情を繰り返したとして、市内の男性を相手取り、面談の強要禁止や約70万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
 市や訴状によると、男性は13〜21年度、生活保護の受給を巡ってトラブルになり、担当の職員らに「死んでほしい」「こんなことするの人間じゃない」と罵声を浴びせ、謝罪などを要求。対応は370回に上り、計295時間に達するとし、市はこの対応にかかる人件費を損害額として請求した。5月27日の第1回口頭弁論で、男性側は争う姿勢を示した。

奈良市は07年に、悪質なケースでは対象者の氏名を市のホームページで公表する制度を設けた。市によると、これまでに1人を公表したという。警察OBを職員として雇用し、奈良県警との連携も強化する。
毅然とした対応は欠かせないが、住民サービスとの線引きが悩みだ。京都市は07年、「市職員の公正な職務の執行の確保に関する条例」を制定し、仕事の支障になる行為の概要を公表しているが、20年度の公表は1件のみ。弁護士は
「実際のところ、クレームの9割は正当なものであり不当な要求と決めるのは慎重な判断がいる」と話す。