山上徹也容疑者の人となりが明らかになればなるほど、安倍晋三元首相の非運が浮き彫りに 100年後の人々にどう映るのだろうか

安倍晋三元首相銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者の人となりが明らかになればなるほど、安倍氏の非運が浮き彫りにされていく感じだ。教科書でも学んだ大正、昭和初期の原敬、浜口雄幸両首相の暗殺事件(浜口は翌年死亡)では犯人は反政権的な思想の持ち主で、政治信条と事件はセットになっていた。

今回も事件の第一報を聞いたときは筋金入りのテロリストがまだ日本にもいたのかと驚いた。しかし、「政治信条に対する恨みはない」との続報には気が抜けた。さらに「母親が宗教団体にのめり込み多額の寄付をして生活が苦しくなった」と私怨(しえん)が動機と聞いてあ然とした。

当初は「団体トップを狙うつもりだったが、接触が難しかった」と狙いを安倍氏に切り替えたようだ。首相として史上最長の通算在位3188日。日本を代表する政治家がこんな理不尽な動機から命をつけ狙われていたのか思うと残念でならない。それも黒い粘着テープで巻かれた手製の銃が使われたという特異性には言葉もない。

背後から至近距離での発砲を許した警備のお粗末さも非運この上なかった。最初の発砲で身をていして元首相をかばった警察官はいなかった。容疑者を確保した横を自転車のオジさんが悠々と通り抜けていく映像は、現場の緩さを何よりも物語っていた感じだ。警察史上最大の汚点といわれても仕方ない。

見ようによっては昨年末、多くの犠牲者を出した大阪市内のクリニック放火殺人事件のような〝逆恨み〟による犯行と同レベルととれなくもない。さまざまな不運、非運が重なってありえない事件が現実となった。この事件が100年後の人々にどう映るのだろうか。

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