安倍晋三元首相が銃撃された事件で、山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=が「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に母親が多額の寄付をして家庭が崩壊した」と供述しているのを受け、かつて信者だった岐阜県内の女性(53)が岐阜新聞の取材に応じ「恐怖心につけ込まれ、マインドコントロールされていた」と、1千万円近い被害を受けた過去を振り返った。

 女性は2006年ごろ旧統一教会に関わった。「当時のことはすっかり忘れてしまったけれど…」。返金請求に際し作成したメモを頼りに、記憶をたどった。

 きっかけは当時小学生だった息子の野球少年団。同じ団に所属する母親に誘われ、風水関係の即売会に出かけたことだった。「あなたの家系には女の人の失敗がある」。店長を名乗る人物にこう指摘され、300万円の「水晶」の購入を促された。「人生の曲がり角。今この時を逃しては駄目」「先祖が地獄で苦しんでいる」。説得を受けること5時間ほど。「もともと家系図とかに興味があった。先祖を助けられるのは私しかいないと思った」。ためらいつつも保険の解約金を充てた。

 その半年ほど後、「世話係」とされる人から「生まれ直すため」などとして380万円の献金を求められた。一度は断ったが、今度は「子孫に災いがかかる」などと畳みかけられた。「何としても自分がやらなきゃ、と思ったんでしょうね」。当時38歳だったことにちなむ380万円の請求を受け入れ、まず100万円を支払った。残額は月10万円ずつ支払い続けた。

 自身が関わっているのが統一教会だと知らされたのは、こうした献金を経た後の08年ごろだった。しかし、マインドコントロールからは抜け出せず、その後も160万円の石の置物を分割払いで買った。献金額は計約1千万円にもなっていた上、さらなる献金の求めに嫌気が差し、09年ごろ自ら関わりを絶った。

 被害対策に取り組む弁護士とつながり、交渉を経て約9割が返金された。得られなかった1割ほどは「高い授業料」と受け止めた。一連の出来事は夫の単身赴任中に起き、被害については今なお、家族の誰にも伝えていないという。

 「教会には心優しく、誰かのために生きたいという感じの人が多かった。だまそうとしたのではなく、彼らなりに救われようと一生懸命だったのだろう」と振り返る。多額の献金をしたとされる山上容疑者の母親についても、言葉巧みに誘導され「わが子を思っての行いだったのではないか」と推察する。

https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/105171