1854年に開国した日本は、当時の世界にとって興味の尽きない新参国だった。

その後、1867年のパリ万国博覧会で日本ブームに火がつく。画家のゴッホが、浮世絵を含む日本アートの熱心なコレクターだったことはよく知られている。19世紀後半に日本が近代国家として世界に
紹介されると、謎に包まれた極東アジアの島国への好奇心もわき上がった

昭和初期になると、欧米のクリエイターや知識人らが日本を訪れはじめる。彼らはみな、禅を西洋社会に紹介した仏教哲学者、鈴木大拙の著作を読んでいた。


カリフォルニア大学バークレー校で仏教視覚文化などを研究するグレゴリー・レビーンは「彼らは、近代的な禅のレンズを通して日本で見たものに感銘を受け、そのすべてが禅や永遠性の特徴だと理解しました。帝国日本によって作られた“日本の美”とは捉えなかったのです」と話す。

だがレビーンによれば、戦後、禅が理想とする美を吸収して最も勢いづいたのは、芸術やアーティストの創作意欲ではなく、資本主義だった。

「この時期を境に、禅と日本の美は急速に商業化されます。資本主義は禅の美を積極的に採り入れ、ビジネスに転化しました。その動きは最初に西洋で、遅れてアジアで起こりました」

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