輸出が原則禁止のシイタケの種菌が、中国に無断流出していることが林野庁などへの取材で分かった。日本の業界団体の調査では、中国で検査した干しシイタケの8割が日本の開発品種だった。日本の種菌メーカーの調査では、中国からの輸入菌床から収穫されたとみられる生シイタケの9割が同メーカーの品種との結果もあり、流出した種菌から製造された菌床が“逆輸入”されている実態も浮かぶ。

 日本で開発されたシイタケの種菌は、国内産地や種菌メーカーへの影響を防ぐため、経済産業省の輸出貿易管理令に基づき1956年から原則、輸出禁止とされている。

 日本特用林産振興会が2020年度、中国国内で無作為に抽出した干しシイタケ21個を開発中のDNA鑑定を用いた技術で調査。17個が日本の開発品種だった。同庁は「大規模調査をすれば、日本品種が中国で広く流通している実態が分かるはずだ」(特用林産対策室)という。
「現地で増殖が進んだ」

 国内最大手の種菌メーカー・森産業(群馬県桐生市)も、中国からの輸入菌床を使っている可能性が高い国内産地のシイタケについて、11年から10年間にわたり検査。対象となった9割が同社が種苗法に基づき品種登録した品種(登録品種)で、かつ7割は現在も育成者権が保護される期間にある。同社は「ルートは分からないが恐らく2010年前後には中国に流出し、現地で増殖が進んだ」と指摘。中国での品種登録作業を進めるなど対策に取り組む。

 同庁の20年の推計では国内で消費されるシイタケの17%は輸入菌床由来。輸入菌床は大半が中国産といい、日本品種を植え付けた菌床も含まれるとみられる。一方、従来は輸入菌床でもシイタケの収穫場所が国内であれば「国産」と表示できたが、消費者庁は3月、菌床培地に種菌を植えた場所を原産地とするようルールを改めた。同社は「国産菌床由来のシイタケの選択につながる」と評価する。

 だが、中国で日本品種の増殖が繰り返される状況は続くとみられる。農水省は海外で権利侵害の取り締まりを担う専門機関の設立を目指している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/fd2061df837f43452b9ae68bdc7ecad1be41bdde