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新型コロナウイルスの流行「第7波」のなか、後遺症の一種「ブレーンフォグ」への注目が集まっている。「ブレーン」は「脳」、「フォグ」は「霧」。文字通り頭の中に霧がかかったような状態で、集中力や記憶力の低下といった症状がみられる。現時点で治療法は確立されておらず対症療法しかないという。専門家は感染者数の増加に伴って患者は増えるとして、警戒感を示している。(深津響)

「まさか自分がなるとは…」

ブレーンフォグを発症した、熊本県の女性(64)はこう振り返る。

女性は、沖縄県の息子夫婦の家を訪れていた5月6日、孫を経由して新型コロナに感染したとみられる。発熱やのどの痛みなど目立った症状はなかったが、検査の結果は陽性だった。

異変を感じたのは、自宅療養期間が終わってからだ。睡眠を十分にとっているはずなのに、日中、頭が重く眠気に襲われる。感染以前は、時間を忘れ、日に3~4時間も趣味の切り絵に没頭していたが、30分ほどしか集中力がもたなくなり、やめてしまうようになったという。

倦怠(けんたい)感や集中力の低下は続き、「沖縄に行っていた疲れかな」と疑問に思うようになっていった。療養期間が終わって1週間経っても改善せず、後日、ブレーンフォグだと分かったという。「聞いたときは『何それ』という気持ちだった」と、女性は振り返る。現在、症状は回復しているが、「コロナの症状がなかったのに後遺症が出るとは思わなかった」と話す。

ブレーンフォグの研究を手がける桐生大学医療保健学部准教授の川上智史さんは「ブレーンフォグは意識混濁の別名で、頭にもやがかかった状態を指す」と説明する。

集中力の低下としては、物事を行うことを引き延ばしたり、起きているのに目の前の物事に集中できなかったりする症状がみられる。記憶力の低下では、知識や単語を思い出しづらくなり、会話で指示語を多用してしまうといった事例があるという。そのほか、思考力の低下や、十分な睡眠をとったのに眠い状態が続くなどの症状もある。

発症のメカニズムは現時点では、完全に明らかにされていない。海外の論文では、新型コロナに感染し、免疫の反応として体内に作られる抗体が原因だと指摘されている。抗体がウイルスではない正常なタンパク質を攻撃してしまい、脳の伝達が阻害されることで、ブレーンフォグの症状が生じる可能性がある。

発症率は新型コロナの株ごとに異なり、以前流行していたデルタ株が高かった。現在流行の中心となっているオミクロン株では、ブレーンフォグの発症率はデルタ株の20~50%程度。しかし、感染力が強く、感染者数が多いため、後遺症を抱える人も増加することが予測される。川上さんは「オミクロン株は重症化しにくいが、後遺症が出ることは十分考えられる。ブレーンフォグ患者の絶対数がこれから増えることは間違いない」と指摘する。

新型コロナ後遺症「ブレーンフォグ」記憶力や集中力低下
https://www.sankei.com/article/20220802-EPTY7PZGH5KJ7H6RZPSVD6F32Q/ @Sankei_newsより