「戦争から目を背けないで」吉岡里帆さんが軍国少女役に込めた思い
8/7(日) 13:00 毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/05c4e72bcda46f85cc99373ccc843ff384612f24
映画「島守の塔」主演の吉岡里帆さん=東京都港区で2022年6月4日、前田梨里子撮影
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 ロシアによるウクライナ侵攻が続く中で迎えた戦後77年の夏。第二次世界大戦末期の沖縄戦を描いた映画「島守の塔」に出演した俳優の吉岡里帆さんにインタビューした。軍国主義教育をたたき込まれた少女を演じながら、吉岡さんは何を感じたのだろうか。

 ◇人を前のめりにさせる「教育」

 映画「島守の塔」で吉岡さんは、太平洋戦争中の沖縄の軍国少女、比嘉凜を演じている。1993年生まれ。沖縄戦についてもほとんど知らず、凜とは生い立ちも考えもかけ離れた、戦争とは無縁の世代が、出演を機に多くを学んだ。そして「知ることの大切さ」を訴える。

 「島守の塔」は、戦争中の最後の沖縄県知事、島田叡と警察部長、荒井退造が、県民の命を守ろうと奮闘する姿を描く。知事付となって、島田と行動を共にする凜は、戦時教育で植え付けられた忠君報国の教えを疑わず、「捕虜になったら自決する」「一人十殺の覚悟」と勇ましい。「命を大切にしろ」と諭す島田に、「自ら信じる正義のために殉じることは、最も正しい生き方です」と反論する。五十嵐匠監督からは「教育されたことを信じ切っていて、周りから見たら怖いくらいに演じてほしい」と求められた。

 「子どもの時から好きなことをして、何を信じるかは自分で選びなさいと言われて育った身からは、教育の中で植え付けられた凜の生き方は悲しく映った」と話す。一方でその狂信が、生きる力だったのかもしれないとも。「この時代の人たちにとっては、生きるために必要な“軸”ではないかとも思いました。皮肉な意味でですが」。凜は空襲で家族を亡くしても、国を信じる気持ちは揺るがないのだ。