米国、新法案のEV購入支援 トヨタなど日本車の逆風に
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【ニューヨーク=堀田隆文】米下院が12日、新たな歳出・歳入法案を可決した。法案には、電気自動車(EV)の新たな普及促進策が盛り込まれた。EVやプラグインハイブリッド車(PHV)の購入に補助金を出すが、支援の対象となるのは北米生産車のみだ。北米でEVなどを生産していないトヨタ自動車など日本車メーカーにとって、新たな枠組みは逆風になりかねない。
新たな支援策では、新車を買う消費者に対し、最大7500ドル(約100万円)の税額控除を実施する。中古車でも4000ドルを控除する。
日本車メーカーの重荷になりかねないのは、新たに設けられる生産・調達要件だ。新車支援の対象は北米生産車のみ。そのうえで、車載電池の部品の一定割合が北米生産でないと7500ドルのうち3750ドル分の支援を受けられない。残りの3750ドルについても、電池に含まれる「重要鉱物」の一定割合が、米国が自由貿易協定を結ぶ国などから調達されたことが条件になる。
現状、トヨタなど日本車メーカーのほとんどはEVやPHVを北米で組み立てていない。最初の前提条件で支援の対象外になる。
車両価格が一定以上の高額車も対象から外れ、購入者の所得要件もある。米消費者情報誌「コンシューマーリポート」は、現時点で支援対象になりうるのは、大手では米EV大手テスラや米ゼネラル・モーターズ(GM)、同フォード・モーター、独フォルクスワーゲン(VW)、日産自動車それぞれの一部車種と分析している。支援を受けるためには、対象外の車を抱える各社は早期に北米での生産体制を整える必要がある。
一方、日本車メーカーに比べ、有利にみえる米国勢にとっても要件は厳しい。電池部材の調達要件からは中国を排除する狙いが透けるが、コバルトやリチウムといった希少金属などで中国勢を排したサプライチェーン(供給網)を構築するのは簡単ではないからだ。GMは新要件について「一朝一夕には達成できない」としている。
自動車各社が米国への投資を加速し、供給網をいちはやく整えられれば、米政権はEV普及に加え、自国への生産回帰という政策目標も達成できる。だが、各社の体制整備が滞れば、中国や欧州に比べ遅れているEVの普及で、さらに後手に回る可能性がある。