「ジャパン・ビンテージ人気には驚かされる。まだ値段は上がると思う」。
東京・お茶の水の中古ギター専門店「シモクラセカンドハンズ」(千代田区)店員の男性(41)は、興奮した様子で、そう話す。
人気が高まっているのは、1970~80年代にかけて日本企業が、米老舗ギターメーカー・フェンダー社、米ギブソン社のギターをコピーするなどした商品だ。
人気が高まるにつれて、値段も上がっており、同店が昨年入荷した東海楽器製造(浜松市)のコピーギターは、
80年代前半の販売当時は定価5万円だったが、約11万円の値がつけられた。今年7月末に売れたという。
周辺の他のギター店も同様の状況で、海外客からの問い合わせも多いという。
人気の秘密は良材と、日本の職人にあるようだ。
音楽出版社「シンコーミュージック・エンタテイメント」(千代田区)でギター関連書籍の編集を手がける平井毅さん(52)らによると、
この時期に製造された商品は、現在は貴重となった良質な木材がふんだんに使用されているという。
また、当時の日本メーカーの職人たちが、細部の結合や金属パーツの精度などにこだわりぬいて作っていたこともあり、
価格以上に品質の高い商品が多く生まれたという。日本人の「職人魂」が、本家に迫るギターを生み出したというわけだ。
しかし、米メーカーが「営業上の利益を侵害された」として国内メーカーに訴訟を起こしたことなどもあり、コピー商品製造は徐々に下火になっていった。
国内でも以前から「価格の割に品質が良い」との声があったが、コロナ禍で室内で楽しめるギターに注目が集まる中
海外バイヤーが、昔の国産エレキに目を付け始めたという。
海外の販売サイトをみると、日本より高値がついていることも多い。
楽器店からは「海外の価格上昇につられて、国内の値段が上がっている」との声も聞こえる。
ただ、この状況に困惑する関係者も多い。
「昔のギターにそこまでの値段の価値はあるのだろうか」と話すのは、東海楽器製造の足立庄平会長(64)だ。
「当時から細部にこだわって仕上げていたが、今のギターの方が精度は高い。昔のギターの価格は高騰しすぎだ」とあきれた様子。
多くのジャパン・ビンテージのギター製造を請け負っていた「フジゲン」(長野県松本市)の山崎竜太さん(43)も「かつて製造したギターが評価されているのは、
率直にうれしい」としたうえで、「結局は楽器なので、弾く人が気に入ることが大切。試し弾きをするなどして、気に入ったものを手にしてほしい」と話した。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220819-OYT1T50109/