私が働き始めて1年後、吸収合併のためA社自体がなくなることになった。A社所属の社員が整理されるなか、自分以外の社員は親会社に残ることになったのに対し、私一人が親会社に残ることが出来ず、退職勧告を受けA社を去ることになったのだ。原因として思い当たる節はあった。仕事におけるコミュニケーション能力の不足だ。

 話の要点を掴んだり先読みしたりする素質があると言いながら、コミュニケーション能力が不足しているというのは矛盾しているのではないか? 私も最初はそう思ったのだが、よくよく考えるとそうでもないことに気づく。話を先読みするがゆえに、話が嚙み合わなくなってしまったのだ。

 とある日のこと。「それってどちらの話のことですか?」と話の分岐点を探るため上司に確認を取ることがあった。すると「〇〇のことに決まってるじゃん」と怪訝な態度を取られた。自分としては、物事を場合分けして考えたところ、二通りの可能性が存在した。しかし、彼の中では一通りの解釈になる、という様子だった。

 確認のために聞いているのに不快な表情をされる。このようなことが積み重なり、自分の疑問を伝えるのが億劫になった。ついには、「そもそも会話しても無駄だ」と考え、コミュニケーション不足となり、会社にとってお荷物の状態に陥っていた。「素質」だと思っていた部分が、ここでは仇となってしまったのだ。

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