国税庁「副業300万円以下の損益通算ダメ」は「ヤバい節税」潰しが狙い? パブコメ1000件超す

国税庁が8月1日に出した所得税の法令解釈通達の改正案をめぐり、インターネット上でちょっとした混乱が起きている。

改正案では「副業収入が300万円を超えない場合は、事業所得ではなく雑所得と取り扱う」と範囲を明確にしたからだ。雑所得は事業所得のように他の所得との損益通算や特別控除を受けることができない。このため「副業を事業所得にして限りなくグレーな節税策」をしてきた会社員にとっては大きな影響が出ることになる。

国税庁が8月末まで募集しているパブリックコメントには8月半ば時点で1000件を超える意見が寄せられている。国が副業を推進する中でなぜ国税庁は副業推進に「逆行」するともとれる案を出したのか。前・青山学院大学長で、租税法の第一人者である三木義一氏に聞きながら考えた。(ライター・国分瑠衣子)

● 副業を赤字にして給与所得と損益通算して節税する「指南サイト」

会社員の副業はコロナ禍のリモートワーク浸透で一気に進んだ。政府が2017年に出した「働き方改革実行計画」でも副業推進が掲げられ、国も新しい働き方として副業を推進している。

こうした背景を踏まえ所得税について見ていきたい。所得税法では所得を10種類に分けている。給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得、譲渡所得、一時所得、雑所得などだ。

会社員が副業で得た所得は一般的には雑所得になる。今回国税庁が出した通達改正案は「会社員で副業をしている人の副業収入が300万円を超えない場合は事業所得ではなく雑所得にします」ということなので、表面上は何も問題がないように思える。

しかし、インターネット上には副業収入を事業所得にして節税する「指南サイト」が数多くある。なぜ事業所得にするのか。事業所得は業績が赤字になった場合、給与所得から赤字分を引くことが認められているからだ。仕組みはこうだ。「所得=収入-経費」だから副業にかかる経費をたくさん使い、副業収入から経費を引き、副業を赤字計上する。こうした上で会社の給与所得から副業分の赤字を引く「損益通算」をして、節税するというわけだ。

一方で、雑所得は損益通算できない。さらに所得を税務署に申告する確定申告には最大65万円の特別控除を受けることができる「青色申告」と、この特典がない「白色申告」の2つがある。事業所得は青色申告ができるが、雑所得は白色申告しかできず節税効果が小さい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/fc8114b7eb5f444c87ae420cd5bbafafe5504480