蕎麦の実でつくるロシアのお粥カーシャとは?|世界のお粥③ | 世界の○○~記憶に残る異国の一皿~ | 【公式】dancyu (ダンチュウ)
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(前略

ロシアや東欧ではソバの実でつくる“カーシャ”という粥が食べられている。モチモチした食感にソバの香り。これはこれで悪くないが、麺の蕎麦を食べ慣れている僕にはほんの少し違和感があった。
友達になったチェコ人の家に居候したときは、粉チーズが一面にかけられたカーシャが出てきて、食べるのに少々苦労した。ソバの実の食感と香り、それらと粉チーズが喧嘩している気がしてならなかったのだ。もちろん彼らチェコ人はそんな風には感じないようで、それどころか好相性と捉えているようだった。

ロシアは未訪なのだが、ロシア人はカーシャに目がないという話を、日本在住のロシア人翻訳家から聞いた。
「なかでもキノコカーシャはスペシャルだ。毒キノコで毎年ロシア人は何人も死ぬんだが、それでもやめられない」と、ややアクの強い彼はその旨さを独特の表現で語った。自分用のカーシャのためにわざわざソバの実をロシアから輸入しているとも言う。
ふと興が湧き、「日本の麺の蕎麦はどう思う?」と訊いてみた。20年以上日本で暮らして帰化までした日本びいきの彼は、顔をしかめ、「サイアク」と言った。
「なぜわざわざ粉にして麺なんかにするんだ?バカじゃないのか?ソバに全然合わないあんなつゆにつけて。ほんとサイアク。俺は日本蕎麦なんて絶対食べない。まずすぎる。ソバは粥だ」
僕が東欧でソバ粥を食べたときに抱いた違和感を、彼はそっくり日本蕎麦に抱いているようだった(彼のほうは違和感というより、拒絶という感じだったが)。

(後略