1989年のデビュー後、〈香田晋(しん)〉は数多くの音楽祭で新人賞を獲得。
テレビ番組やCMにも出演し、演歌界期待の若手だった。

バラエティー番組にも起用され、お茶の間の人気者になった。
だが、クイズ番組で爆笑をさらった「おバカ」なキャラクターが、自らの首を絞めていった。

テレビでも巡業先でも歌の時間がモノマネやクイズのコーナーに割かれるようになった。演歌歌手なのに、いつしか「バラエティーのハチマキの人」になっていた。

「今だから言えるんだけどね」。〈香田晋〉として活躍した鷲崎孝二さん(54)は、当時の心境を明かす。

 「答えがわかっていても、空気を読んで間違えないといけない。センスが求められるから、いつもハラハラしていた」。営業先へ向かう車内でも「おバカ」な回答を考えながらハンドルを握る日々。「自分は何がしたかったんだろうか――」。
そう感じながらも、求められる〈香田晋〉を演じ続けた。
ある日、歌でこぶしが回らなくなった。
みるみる症状は進み、声がかすれて歌えない。しかし、検査でものどに異常はなかった。
かかった心療内科で告げられたのは、ストレス性の発声障害だった。

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