「本でしか読んだことがないような記録的な台風」。台風14号が九州に迫った17日、気象庁の黒良(くろら)龍太予報課長は記者会見で勢力をこう表現した。
16日午前3時時点で中心気圧965ヘクトパスカルだった台風14号は、24時間後の17日午前3時に910ヘクトパスカルにまで低下。黒良氏は「衛星画像を見て、かなり危機感を持った」と呼びかけた。

台風は一般的に海面水温が高いほど勢力が強まる傾向がある。京都大防災研究所の榎本剛教授(気象学)は「海上の広い範囲から水蒸気が集まり、対流活動が活発となって急速に発達したのでは」。
名古屋大宇宙地球環境研究所の坪木和久教授(気象学)は、台風が急発達した16日と17日、上空から台風の目の中や周辺に観測機器を投下し、気圧や風速などのデータを集めた。「これまで観測した台風の中でも、もっとも強かった」という。

18日夜に鹿児島市付近に上陸した時点では、中心気圧は935ヘクトパスカルだった。その後は九州北部に進んだものの、主に陸上を通過したことで勢力は衰え、被害があった場所も限定的だった。

榎本氏は、気象庁が当初予想していた海上の進路ではなく、予報円の最も東側の陸上のコースを進んだ経緯を注視。一般的に台風は、上陸すると地表面の摩擦でエネルギーが失われるためだ。「海上のルートを進んでいた場合、もっと大きな被害が出ていた可能性もあった」と話す。
https://news.yahoo.co.jp/articles/65bb59c01fb78a5ecb980bc1a5dfe2f7dd9764d4