『出走馬の性別間違い』相次いだ背景 かつてならあり得ないエラー【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】（中日スポーツ） - Yahoo!ニュース
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地方競馬で今月、出走馬の性別が間違っていたという事案が2件続けて判明した。笠松では9日の発表。牡馬が「騙馬」の発表で7～8月に3走していた。2件目は門別で、14日に騙馬が「牡馬」の登録で出走し、後に去勢していたことが判明した。
どちらも厩舎が誤った登録情報で出馬投票したためで、責任は出走馬の管理者たる調教師にある。これは仕方ない。だから原因の一端に…とまで言い出すつもりはないが、記者は「かつてならほとんどあり得ないエラーだ」と思った。
出走馬は装鞍所で馬の取り違えやすり替えがないか確認される。現在はたてがみの付け根の皮下に埋め込まれた長さ11ミリ、太さ2ミリのマイクロチップを読み取る。マイクロチップの仕組みは交通系電子マネーのSuicaなど、非接触型ICカードと基本的に同じ。日本では2007年産から国内の競馬出走のために埋め込みが義務付けられた。
競走馬には出生ほどなく「健康手帳」が発行される。手のひらサイズより少し大きい冊子で、生涯“携行”が義務付けられる。予防接種歴や去勢馬には去勢証明書も添付される。ここに、各馬の個体識別情報が詳しく記載されている。馬は鼻面や四肢にある白斑の位置や形、旋毛（つむじ）の場所が生涯変わらない。マイクロチップ以前は、この記載に従って声を出して指さし確認。「鹿毛。牡馬。（脚部白斑は）左後ろ1白、（その形は）小白。（鼻面は）流星断鼻梁鼻白。（以下旋毛、まず頭部前面から）珠目正、右は髪中、芭蕉、左は芝引…」。ものすごく時間がかかる。マイクロチップはこれを劇的に改善した。
この手順の中に、性別の確認もあった。ひ腹のあたりから首を突っ込んで生殖器を確認したり、牡馬、騙馬は睾丸（こうがん）が見えなくとも去勢手術の跡を探して性別判定していた。今般のエラーは、かつての個体識別法なら、主催者が装鞍所で気付けたはずだ。
中央競馬では入厩検疫で健康手帳が開かれ、予防接種歴を中心に詳しく確認される。その手順で去勢証明書の有無も目に入る。去勢歴を誤ることは原理的にほぼあり得ないだろう。
